はじめに
このページは、ウチのサイトで紹介している改造した全てのティンホイッスルの改造方法を1ページにまとめたものです。各ページをいちいちご覧になるよりも、こうしたほうがわかりやすいと思ったので。
まとめページということもあり、かなり画像が多くてページが重いですけど、ページの性質上仕方が無いので・・・ご容赦ください。ごめんなさい。
ウォルトン スタンダード
演奏性アップの改良作業
ウォルトンのスタンダードは、しばらく演奏していると高音部の音色が非常に汚くなってきて、聴くに耐えない音色になっちゃいます。
この原因は、ウインドウェイ内部に溜まった水分が無駄に踊ってて、管体へと逃げてくれないからです。
逃げてくれないのは、ウインドウェイ横側の段差のせいです。この段差を水分が超えられないからです。
エッジの形にも問題があり、息が当たる先端部分が垂直に成型されているため、息の流れが乱れやすいようです。
ウインドウェイの水分により息の流れが乱れ、更にエッジでも乱れるという、悪循環ですね。
そのために、結果的に高音部が汚い音になってしまうようです。さて、改良してみるとしますか。
DIYセンターなどで売ってる、金属製の平たいヤスリを用意します。
黒い取っ手のがダイヤモンド混合金属のヤスリ、緑の取っ手のが鉄ヤスリです。
ヤスリは、側面(面積が狭い面)にもギザギザが付いてるものを買ってきてください。
横側のギザギザがないと作業はできません。お店でヤスリを選ぶ時はご注意を。
ヤスリをウインドウェイに差し込み、ウインドウェイ横側の段差を削る作業を始めます。
ヤスリ側面のギザギザ部分を使い、入り口から出口までのラインができるだけ真っ直ぐになるように削ります。
反対側も同じ要領で削ります。
くれぐれも焦らないことですね。削りすぎは取り返しがつきませんから。
ここで、スタンダードとギネスの、エッジの位置を確認してみましょう。スタンダードはギネスと比べて、エッジの位置が高いです。
ちょっと解りにくい写真かしら?
スタンダードはエッジの位置が高いために、高音部が出にくいんですよね。
どうしてもエッジの高さが気になったら、プラ板で自作するのも手ですけど、慣れてない人にはお奨めできないです。
さて改良作業に戻りましょう。今度はヤスリの平面部分を使います。垂直状態になってるエッジの先端を、斜めに鋭く削る作業です。少しでも息の当たる部分を下げる目的です。
エッジの先端の、垂直になってる出っ張りを削って、斜めに角度をつけます。
なぜ出っ張りだけかというと、ウインドウェイからの距離を狂わせないためです。
できればマウスピースを外して、内側から弱いチカラで軽く磨くカンジで、削りカスを取っておきましょう。
それから、細く切ったガーゼと、細い木の棒を用意します。これで管体内部の掃除もしてみるとしますか。
木の棒を使うのは、万一の時に管体内部を傷つけないようにするためです。
ガーゼをグルグル巻きにして木の棒を隠す状態にします。
これを管体に差し込み、ガーゼの巻き方向に従って回転させながら奥まで差し込んで掃除します。回転させるのがコツです。
これで改良作業は完了です。作業後吹いてみたら、高音部がいつでも綺麗に出るようになりました。
ウォルトン ギネス
チューニングのウラ技
お湯で温める方法でもマウスピースが外れない時、その時はどうやってマウスピースを外すのかを紹介します。
ライターで管体をあぶって、マウスピースを外す作業です。ライターは100円ライターで充分です。
この作業は、ひとつ間違えばマウスピースを溶かしてダメにしてしまう危険なウラ技なので、作業要領をよく読んでから作業してください。
ライターであぶる作業は、マウスピース自体をあぶったらマウスピースが溶けちゃうので、重要なのは、「あぶる位置を管体のみにする」ことと、「あぶる時間を短時間にして、何回かに分ける」ことです。
管体が熱くなるので、管体を持つほうの手には、何かしらの手袋をはめたほうがいいでしょう。
あぶる位置と管体からの距離は、写真の通りです。
あぶる位置と距離はこれくらいで
これで、あぶりながら管体を回します。管体のラベルがコゲないように、素早く回したほうがいいです。
管体をクルクルっと
ラベルがコゲないように注意
管体を2〜3回ほど回転させてあぶったらひとまずヤメて、管体が完全に冷えたら再度同じあぶり方をする、これを何度か繰り返します。
あぶるのは、これで終わりです。管体とマウスピースを握って、軽く雑巾を絞る要領で、ねじりながら回します。
やれやれ、やっと外れた〜。
ライターであぶる作業を繰り返すのは2〜3回でいいと思いますけど、2〜3回やってもマウスピースが外れない時は、また同じ作業を繰り返してください。
それから、マウスピースの固着を防ぐ方法を紹介します。
ギネスのマウスピースは、一度は外れても、差し込んでしばらく使ってると、また差し込み部分が固着してくるので、固着を防止するために管体の差し込み部分をサンドペーパーでジョリジョリ削って、黒い塗装を綺麗に剥がしておきます。
このくらいの範囲を削る
これでまた差し込む
うっかり削りすぎて差し込み部分がユルユル気味になったら、クラシックの管楽器を扱ってる楽器屋さんで、ピッコロなどのジョイントに塗るコルクグリスを買ってきて、差し込み部分に厚めに塗ればいいですよ。ユルすぎず固すぎずの丁度いい抵抗になります。
演奏性アップの改良作業
ギネスは、高音部で息を強く吹き込まないと音割れする傾向があるんですよね。
原因は、ウインドウェイの出口に残ってる、プラスティック成型のバリのせいのようです。
バリが原因で、息の流れが乱れて綺麗にエッジまで届かないので、音割れしてしまうようです。
ウインドウェイ出口の上側に見事にバリが残って、本来は長方形の穴なのに、まーるくなっちゃってます。
また、向かって右の出口ですけど、下側の寸法が狂ってますね。プラスティック成型の品質がかなり悪いです。では早速、改良してみましょう。
用意する道具は、ウォルトンのスタンダードの時に使ったヤスリで充分ですし、横側にギザギザが付いてなくても大丈夫です。
黒い取っ手のがダイヤモンド混合金属のヤスリ、緑の取っ手のが、よくある鉄ヤスリです。
ウインドウェイにヤスリを入れて、突つくようにして出口のバリをかき出します。
取りあえずバリが全部折れてくれたら、一旦ヤスリを抜きます。
折れて出てきたバリを除去するために、ウインドウェイ出口側からこさぐようにして、バリのかけらを取ります。
この時、ヤスリがエッジに触らないように注意してください。
これで改良作業は完了です。作業後吹いてみたら、普通の息使いでも高音部で音割れはしなくなりました。大成功〜。
ウォルトン メロウD2015年モデル
とまぁ、今まで散々ウォルトンに不満ばっかりを言ってきたワケですけど、好きなんですよーこのメーカーのティンホイッスルは。どこが好きかって、性能はともかくとしても、ウォルトン独特のあの「ヴォアァ〜」という篭ったような悲しげな音色が何よりも好き。
それで、あまりにも問題が多すぎた当時の2001年モデルは手放していたんですけど、最近なんとなく「あれからもう14年も経ったことだし、ウォルトンもずいぶん品質が改善されているかもしれない。いかんせん量産品だから品質にバラつきがあって当たり外れがあるのは仕方が無いとはいえ、まさか今でも2オクターブ目の殆どが音割れするなんてことはないだろうし」と思って、メロウDの2015年モデルを注文しましたよ。
ええ、ただケチを付けるだけなら誰でもできるので、品質が悪いかもしれないことを承知の上で最新モデルを買ってみて、本当にまだ品質が悪かったらケチを付けながらも改造&改良をして、より完成されたティンホイッスルに仕上げていけばいいじゃないか、その改造&改良記録をサイトに載せていこう、というのが私の考えです。そうすれば皆さんのお役にも立てるだろうと思うので。
管体の太さが標準的なスタンダードDにしようかと思ったんですけど、私にとってはスタンダードDは息がラクすぎて却って吹きにくいので、息量が多めに必要なメロウDを選びました。
久々のメロウD、届くのが楽しみです。インプレはまた後日・・・
届きましたーーー。懐かしのメロウD。
最近のウォルトンは、マウスピースがこういうフィルムで包まれてるんですね。
フィルムを剥がしてないので当然まだ吹いてません。
今日は最愛のスーちゃんの改造後のテストプレイをしてて時間がなくなったので、メロウDは外観だけをアップです。近日中にインプレ書きまーす。
で、後日このメロウD2015年モデルを吹いてみた感想・・・
「かなり、完璧に近いくらいに品質が改善されてる! よかった!」です。
最初に書いておきますけど、たまたま私の買ったものが「当たり」だったのかもしれません。何せ量産品でロットごとの品質のバラつきが多少あるでしょうから。あと、マウスピースがお湯で温めなくても最初から動かせてスポンと外れました。これも今回買ったのがたまたまそういう仕様だったのかも。マウスピースを動かしてチューニングできるから便利ですね。
低音部・中音部・高音部ともに、多目の息を使いながら思いっきり吹いてみると、ちゃんとメーカー保障範囲内のハイエンドのC#まで綺麗に出ます。ウインドウェイとエッジとの高さ関係を見てみたら、エッジは真ん中くらいの高さに位置していて、「エッジ低くなくても高音部がちゃんと出やすくなってるー。不思議だなー」って思いました。マウスピースの構造って奥が深いんですね。ティンホイッスルの音出しの細かい仕組みを勉強してる身としては、まだまだ覚えることが多いようです。がんばらなきゃ。
で、ピッチバランスなんですけど、平均律を基準にして吹こうとするとバランスはちょっとバラバラしててかなり苦労しますけど、これって、っていうかウォルトンの昔からのポリシーとして、純正律で吹くことを前提にして作ってるんじゃないか、って今更ながらに思っています。え?「今まで気づかなかったのかよ!?」って? はい、気づきませんでした・・・ごめんなさい・・・
試しにアイリッシュでよく使われるらしい代表的なキー(D、Bm、G、Em)だけで音階を吹いてみたら、かなり響きがいいんですよ。個人的な推測に過ぎませんけど、やっぱりアイリッシュを吹くことを大前提とした上で純正律を意識して作ってるんじゃないかと思いました。考えてみたら、ある意味当然のことなのかもしれません。
ウインドウェイにもバリはないし、エッジの成型も正確で綺麗ですし、ウォルトン特有の、あの「ウワァァァン」という篭ったような哀愁ある音色も健在です。
これなら何も、演奏性アップの改造をする必要はないみたいです。ウォルトンさん、よくぞ品質改善してくれました! ありがとう! 昔から好きなメーカーだったので嬉しいです。
2015年モデルはメロウDしか吹いてないので、スタンダードやギネスやリトルブラックなどの品質はわかりませんけど、メロウDがこの調子なら、今なら他の機種も改善されてるかもしれないですね。
でも本当にウマイ人が吹いたら、この笛でもかなり平均律に近い状態の音が出るんでしょうね。私にはそこまでのウデはありません・・・
というわけで、「ウォルトンさん復活おめでとうございます」と言いたいところですけど、「アンタが14年間も知らんぷりしてる間に、とっくの昔から復活してたよ」ってツッコミが飛んできそうだ。
・・・・・・で、
マウスピースの完成度が高いから改造する必要がないとわかったら、なんだか無性に、純正律に合わせた(んじゃないかなーと個人的に勝手に解釈)この笛を、今度はトーンホールを削ってみたいという欲求が湧き出てきて・・・(笑) うう・・・恒例のトーンホール削りをやって平均律に近づけたい。
もともとはこのメロウDは、仕事中に社用車の中で休憩がてら吹こうかなーと思って軽〜い気持ちで買っただけなんですよね。そうそう、何しろ仕事中だから万一盗まれてもいいようなどーでもいい存在の笛って条件で買ったのでして。ウォルトンのファンから文句がきそうですけど(笑)
そんな笛をいじって平均律に近づけようなんて、それって私的には「この笛に愛着が湧いてきている証拠」だったりします。愛着が湧いてくると改造して自分好みにしたくなるんですよ。
さて、どうしようかな。今度の週末にでもやってみちゃうかな。今考え中なのです。
やっちゃいました(笑)。本命のスーちゃんとは裏腹に、「メロウDの改造はほとんどシャレだから遊び感覚で楽しく作業しよう」って感覚でやりました。実際やってて楽しかったです。
高音部の反応は元々よかったんですけど、ハイエンドとか3オクターブ目を更に綺麗な音色にするために、まずウインドウェイ出口のバリを取って、エッジの先端を更に鋭く削りました。でもあまりにも鋭く削りすぎたため、エッジの先端の角度が寝た分、高音部は確かに更にラクに綺麗に出るようになりましたけど、吹き込む息への抵抗感がなくなって、かえって吹きづらくなっちゃったほどです。エッジの先端の角度を寝かせる頃合って難しいですね。僅かに寝かせただけでずいぶん抵抗感がなくなります。
「多目の息量を使い、息への抵抗感がない」という意味では、スザートに近い吹き心地かな、と思います。
そして、恒例のトーンホールいじり。丸ヤスリで削りました。慎重に、かつ手荒にガリガリやりましたよ。ええ、この笛はそれくらい気を使わないので。手が滑って管体を傷つけても気にしないっと。
押さえやすいように、ちょっとだけ楕円形に削りました。F#のピッチだけがどうしても上がりきらなかった(10セントくらい低い)んですけど、いろいろ吹いてみたら、まぁまぁ大体ですけど平均律に近づけることができたんじゃないかと思います。あとは自分のテクニック次第ですわ。
この後、目の細かいサンドペーパーでトーンホール周りを滑らかに磨きました。指を滑らせる半音運指を使いやすくするためです。
考えてみたら、今までオーバートンなどのアルミ管体やディクソンなどのプラスチック管体のはトーンホール削りでピッチバランス取りをやったことは数知れないけど、真鍮の管体のをピッチバランス取りしたのは多分初めてかも。
結果、吹くのがすっごく楽しくなリました。やっぱりピッチバランスが取れてると吹いてて気持ちいいですよ。
あとは、マウスピースの空洞を埋める「詰め物作業」をやってみようと思っています。失敗しても元に戻せるように、こちら
「安ティンホイッスルの改造による性能向上」
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n251571
を参考にさせていただいて、コマンドタブを使ってみる予定です。楽しみだわぁ〜。熱と直射日光が強い夏の昼間はスーちゃんをお休みさせて、その間メロウDの改造に夢中になっています。
あらかじめコマンドタブをそれ自身の粘着力だけで仮付けしておいて実際に吹いてみて、「低音から高音までちゃんと音が出る」ことを確認しました。メロウDでは大丈夫なんですね。では完全に永久的に塞いじゃえ〜い、と決めました。
で、コマンドタブを一旦外して、本番の作業内容です。歌口の周りをマスキングしておきます。特にウインドウェイ出口のマスキングはしっかりしておかないと、塞がっちゃうと後でかなり苦労することになりますのでご注意ください。
まずコマンドタブをほぼコナゴナに、それこそ発泡スチロールの粉の小ささくらいに切り刻んでからマウスピースの空洞に落とし込んでいき、その状態ではコマンドタブの接着力だけでは不十分なので、瞬間接着剤で周りを軽〜く固めます。コマンドタブの粉が踊らない程度で充分です。で、空洞が3/4くらいまで塞がったら、今度はホルツのファイバーパテをマイナスドライバーの先っぽにくっつけて歌口から入れて、先ほど詰めたコマンドタブを完全に塞いじゃいます。歯医者さんの「詰め物をして被せ物を入れる」のと同じカンジです。
パテが垂れないように吹き込み口を下にして適当な物で固定して20分くらい放置して乾かします。で、仕上げがちょっと(かなり?)雑ですけど、できました。
エッジにある白いのは、柔らかい薄塗り用のパテです。エッジを鋭く削りすぎた分、元の角度に戻したのでした。おかげで息への抵抗感が戻りました。でもハッキリ言って見栄えが汚いですね。ホントは塗装したほうがいいんでしょうけど、まーいいやどうせウォルトンだから(おい)。
実はこの「詰め物作業」は、やったのはこの笛が最初だったりします。初心者がやると、こういう雑な仕上がりになるという、悪い見本ですね(笑)。
あと、元々Gのピッチが高すぎたので、一つ下のトーンホールをアルミテープで少しだけ塞ぎました。ピンボケですみません。
これで今回の作業は終了です。
さて、改めて性能を確かめに吹いてみたいところですけど、今日は明日の仕事があるので早寝して、今度の週末にでも思いっきり吹きに行く予定です。
後日、近所の農道までテストプレイに行ってみました。結果は、低音部がすごくシッカリ芯の通った音色になって、吹き込んだ分だけ全部音になっているという吹き心地でした。でも2オクターブ目のE周辺の中音部に濁りが出てきて、ハイエンド付近はかなり強く吹き込まないと綺麗な音が出にくくなりました。2オクターブ目のEの音が出にくいのは、どこかのブログさんで書かれていましたけど、ソプラノD管ティンホイッスルの弱点とも言うべき特性なんだそうです。そういえば以前吹いていたオーバートン(現ゴールディ)のソプラノD管もそういう特性を持ってましたっけ・・・
3オクターブ目に至っては殆ど出ないといってもいいくらい、高音が出にくくなりましたね。まぁこれは大体予想してた通りでした。
そのかわり、かなり奥までマウスピースを差し込んでも、笛全体のピッチがやや低めになりました。チューニングメーターで計ったら全体的に15〜20セントくらい低くなりました。息の滞留場所が無くなるとピッチが下がるってことですよね? なんでそうなるのかな? 今のところ原因不明です。まぁそのおかげで思いっきり強く吹けるからいいんですけどね。あまりにピッチが低すぎたらマウスピースを一旦外してマウスピース側の管体を1〜2ミリ削るかもしれません。これは今後の様子見です。
結論は、機種によって結果は微妙に違ってくるだろうけども、詰め物作業をすると、低音部がシッカリ出て全体のピッチも狂いにくく、けっこう強めに吹いても音がひっくり返らないこと。それだけ息への抵抗感が出てきたこと。その分高音部はやや出しにくくなるけど、シッカリ強く吹き込めば一応ハイエンドまで出る。ただ笛全体のピッチがやや下がるので、できればチューナブルな機種のほうが望ましいと思う。こんなところでしょうか。
吹き心地は、息への抵抗感が出たことと、シッカリ吹き込まないと高音部が出にくいという点で、ちょっとオーバートン(現ゴールディ)に似たかな? というカンジです。ピッチバランスを取るためにトーンホールが大きくなって押さえにくくなったけど、全体的には性能がアップして、ずいぶん面白い笛になりました。
ウォルトン特有の「ウワァァァン」と篭ったような音色もお気に入りですし、これからもどんどん吹いていきたいです。
それにしても、高音部が出にくくなるなんて、最愛のスーちゃんに詰め物作業をやらなくて本当によかった・・・危ない危ない・・・
ディクソン1ピース(2003年モデル)
ウインドウェイの改造作業
マウスピース部分は、今まではどこもいじっていないノーマルのままでしたけど、ノーマルのままだと、2オクターブ目のG、A、B、C#の音を出す時に、ディクソン1ピースの特性上、かなり強く息を吹き込まなければならず、その分G、A、B、C#のピッチがやや上がってしまい、他のトーンホールとのピッチバランスが取れませんでした。
そこで、ウインドウェイ内部を狭くして、高音域の息量を減らして、結果的にG、A、B、C#のピッチを大体標準ピッチにまで下げて、他のトーンホールとのピッチバランスを合わせよう、ということにしました。
この作業は、後に紹介するトーンホールを削った作業とほぼ時を同じくして作業したので、ピッチバランスを平均律に近づけるために、ウインドウェイ改造とトーンホール改造のダブル作業で改造をしたことになります。
さて作業開始です。やったのは、ウインドウェイの上下の広さを調整する作業です。まず、ウインドウェイの上側の部分(丸くアーチ型になっている部分)ですけど、プラスチックの板の上側だけにパテを塗ったものをウインドウェイに差し込んで、ウインドウェイの上側だけにパテを塗ります。それでパテが乾いてから細かい平ヤスリやサンドペーパーをウインドウェイに差し込んで、パテを細かく修正していきます。
ピッチバランスが取れているかどうか、その都度シェイクダウンテストをして、納得がいかなければもうちょっとパテを塗り(あるいはパテを少しだけ削って)、ピッチバランスが取れるまでウインドウェイの上下の広さを調整します。この作業は相当な時間と労力を費やしました。まぁ楽しい作業だからいいんですけど(笑)。
ここで忘れてはならないのが、ウインドウェイの両サイドの溝に付いたパテを完全に除去することです。こうしないと、演奏中にウインドウェイに溜まった水分が管体へと流れていってくれなくて、そのせいで、高音域は出やすくなっても低音域が非常に出にくくなってしまうからです。ディクソンのウインドウェイの両サイドの溝は、水分を逃がすために設けられているので。
最後に、パテが剥き出しになっていると吹いている間に水分を吸ってパテが劣化するかもしれないので、自動車用のタッチペンでウインドウェイ内部を塗装します。これで完成です。
こうして外から見ただけでは、ウインドウェイ内部を改造したことはまるで解らないでしょ。でも実は相当、笛の特性が変わりました。
作業を終えて2〜3日ほど放置し、パテと塗料が完全に乾くのを待ってから、いよいよ本番の長時間演奏テストをしてみたところ、見事にピッチバランスが取れていました。
ただ、この笛をピッチバランスにこだわって吹きこなそうとすると、全体的なピッチがほんの僅かに高めになってしまうことが玉にキズ。Aのピッチでいうならば、A=442Hzくらいですかね。これくらいならセッション現場でもほとんど問題ないでしょう。ましてソロ演奏が多い私ならば尚更気にする必要はナッシング〜です。
ついでにおまけの画像を。
管体末尾のゴールドラインのシールは、色が薄れてきたので剥がしちゃいました。
ディクソンのロゴの刻印と、D管を示す刻印です。
トーンホールの改造
先に紹介した、ウインドウェイの改造とほぼ同じ時期に、この作業をしました。
トーンホールをできるだけ平均律に近づけるように、各トーンホールをひとつひとつ慎重に丸ヤスリで削りました。
さて、トーンホールをどのくらい削ったか見てみましょう。ディクソンのチューナブルのノーマルと比べてみます。
上がチューナブルのノーマル、下が1ピース改造版
これじゃよく解りませんね。ではもっと拡大して、
上がチューナブルのノーマル、下が1ピース改造版
更に拡大して、左から、B、A、Gのトーンホールです。
上がチューナブルのノーマル、下が1ピース改造版
お次。左から、F#、E、Dのトーンホールです。
上がチューナブルのノーマル、下が1ピース改造版
Eのトーンホールだけは元々ちょうどピッチが合っていたので削らなかったんですけど、E以外のトーンホール(5つ)は全て丸ヤスリで削りました。でもこれだけ拡大しても写真からはよく解らないですね。つまり、写真からはよく解らないくらい僅かに削っただけ、ということです。元々ピッチバランスがまぁまぁ取れていたものを、5つのトーンホールを僅かに削ることによって、更にピッチバランスの完成度をアップさせて平均律に近づけたというワケです。
ショウ
ショウは、笛の音色そのものは柔らかい独特の雰囲気でいいんですけど、やはり大量の息が必要です。ウインドウェイが広すぎるためなんですよね。
冬場に鏡を見ながら吹いていて気付いたんですけど、ウインドウェイの出口横側から水分が逃げていかず、低音部でさえも出にくいんです。冬場は水分が多く発生しますからね。
この原因は、ウインドウェイ横側の段差のせい、ということが解りました。
水分がこの段差を乗り越えることができず、管体へと流れていかないんですよ。
息に対する反応も悪く、かなり吹き込まないとまともな音が出ないという、困ったティンホイッスルです。この原因は、エッジの作りが雑なために、息の流れが綺麗に当たらないせいのようです。いやはや、悪いところだらけですね。これだけ出来の悪いティンホイッスルも珍しいわん。
では、改良いってみましょう。
このウインドウェイ出口を絞って、息のスピードを上げる作業です。
親指の爪でウインドウェイ出口を潰します。ショウは、材質であるニッケルシルバーの板が薄くて曲げやすいので、親指の爪で充分かと。
ちょっとピンボケですけど、ここまで絞りました。
その気になればもっと絞ってもいいでしょうね。何せかなり広い出口ですから(2006年3月9日追記:今では更にウインドウェイ出口を絞って、縦の寸法が2ミリくらいになっています)。
あまりにも潰しすぎたら、ヤスリの先端で起こして微調整します。
エッジの部分に当ててテコのチカラをかけないようにご注意。柔らかいエッジがグニャリと変形しちゃうので。起こす時は、微妙なチカラの加減が大事です。
次は、ウインドウェイの段差を削って無くすんですが、この作業だけは、人によっては無意味に感じると思います。なぜかというと、とても寒い冬場の屋外で吹く条件だけで有効だからです。極寒な条件下だけにおいて水分が管体へ逃げていかない、そういう現象を起こす笛ですから。
側面にギザギザが付いてるヤスリを用意します。
この作業は、ヤスリの側面のギザギザを使ってウインドウェイを削るので、そういうヤスリが必要なんですよ。
出口は段差を無くしても、入り口はあまり削らなくていいです。出口付近が斜めになる程度で充分でしょう。
反対側も同じ要領で削ります。
削る時、ショウの場合はあまり神経質にならなくて大丈夫です。何せ元の作りがいいかげんなので。
さて、次の作業です。この雑な形のエッジを何とかしないと。
板が薄くて柔らかいので、親指の爪でオッケーです。少しずつ押しながら逆アーチ状にしていきましょう。これは大事な作業ですよ。エッジをちゃんとへこませないと音が出にくいんです。
少しだけへこませたところですが、この後更にへこませて、かなりの逆アーチ状にしました。
毎度お馴染みで、潰しすぎたらヤスリの先端で起こします。ウインドウェイにテコのチカラをかけないようにご注意。
エッジは、ここまでへこませました。
最初の作業でウインドウェイ出口を絞りましたよね。それと同じカーブを描くようにエッジもへこませました。
これで改良作業は完了です。作業後吹いてみたら、びっくりー。今までよりもかなり少ない息量で高音部を楽に出せて、ロングトーンもすごく楽になりました。
極寒の屋外での水分テストもオッケーでした。やった〜。
二年くらい前にやむをえぬ事情で手放したけれど、見た目や仕上がりがメタクタにボロで、「おんぼろティンホイッスルの代名詞」と言ってもいいショウが、私は今でも大好きです。多目の息を消費するところといい、優しい音色といい、吹きやすさといい、また欲しいなーって思います。そこで一発ギャグを・・・
私「ああ、ショウの笛大好き」
誰か「え? あんなショウもない笛が好きなの?」
ちゃんちゃん!
改造記録:木のブロックの整形と表面保護作業
上に書いたとおりで、念願のショウの2015年モデルを買いましたので、吹きやすいように改造してみたいと思います。
今後ゆっくりと時間をかけて吹き倒していきたいと思いますけど、その前に、木のブロックを水分から守るために事前処置をしておかなきゃ、ってことで、まずは、表面保護作業をする前に、下唇が当たる部分を更に丸く削って、よりくわえやすくしました。グラインダーがあればラクだったんですけど、ないので丸ヤスリで根気強く削りました。結果、こんな風になりました。
くわえやすさは、下唇が当たる部分の丸さという意味で、スザートとディクソンの中間ってとこでしょうか。木の部分を削っただけなんですけど、ずいぶんくわえやすくなりましたね。少なくとも2001年モデルに比べたら桁違いです。
さて、これから木の表面保護作業をしないと・・・そのレポは追々アップしていきます。
クラーク オリジナル
演奏性アップの改良作業
クラークのオリジナルは、演奏に大量の息が必要で、特に高音部でのロングトーンなどは非常にキツいです。
原因は、ウインドウェイが全体的に広すぎて、出口までの絞りも甘いせいのようです。
息に対する反応も悪いです。せっかく吹き込んだ息がムダになっています。これもウインドウェイ、特に出口が広すぎるからです。では、改良してみましょうか。
このウインドウェイ出口を絞って、通る息のスピードを上げさせます。
ウインドウェイ出口を、親指の爪で強く押して潰し、出口を絞ります。爪は僅かに伸びてる状態のほうがやりやすいでしょう。
「やってると爪が痛くてイヤだー」という人は、ヤスリの取っ手を使って押しつぶすのもいいでしょう。でもこれだとチカラの加減が難しいですよ。慎重にやれば大丈夫でしょうけど。
どちらの場合でも、ウインドウェイの半月型が綺麗に均等に潰れるようにしてください。
で、こんな風になりました。ずいぶん絞ったでしょ。でもあまり絞ると低音部が出にくくなるのでご注意ください。
もし潰しすぎた場合は、ヤスリの先端の薄い部分を使って、ゆっくり起こして微調整します。
これで改良作業は完了です。作業後吹いてみたら、すっごい息への反応がいいことに自分で驚きました。高音部のロングトーンもかなり楽になりました。
あと、グレンフィナンさんのサイトが参考になったんですけど、つまようじをウインドウェイの出口に差し込んで、感触がよかったら先っぽを折って詰め込んじゃうのも手ですね。
この方法で息が楽になったティンホイッスルは多かったです。
オーバートン(現ゴールディ)
改造(ウインドウェイ)
気難しい特性に苦しむ
私が愛用しているオーバートンのソプラノDは気難しい特性を持っていて、ウインドウェイのわずかな広さに対して非常に敏感に音が反応しちゃうんですよ。2オクターブ目のEの音がダブルトーンになって、気温の変化にも影響を受けやすいんです。
Overton
Soprano D
「オーバートンを吹くための独特のテクニック」というのが必要で、極端に繊細な息使いをしなければならないんです。綺麗な音やピッチの合った音を出そうとすると、かなりクセのある、気難しいティンホイッスルだということが解ります。
今までオーバートンのいいところばかりを書き連ねてきましたけど、このように、悪いところも少なからずあるんですよね。私は、ティンホイッスルのいいところばかりを紹介するのはつまんないと思うので、悪いところもどんどん書いちゃいます。
オーバートンの悪い特性を演奏テクニックでカバーできないかと思って、いろいろと練習してみたんですけど、基本的な特性は変わらず、気温の変化に極端に影響を受けやすいのも変わらなかったです。
そこで思い付いたのが、「ウインドウェイ内部をほんのわずか狭くしよう」ということです。
ビニローゼを試しても…
あのただでさえ狭いオーバートンのウインドウェイを更に狭くするには、どうしたらいいかを考えて、DIYセンターに行って、「ビニローゼ」という塗料を買ってきました。
このビニローゼ塗料を、細く切ったプラスティックの板に塗って、それをウインドウェイに通してウインドウェイ内部を塗装したんですけど、ビニール樹脂の塗料なので熱に弱く、夏場はだんだんと溶けてきて演奏に支障が出て、ダメでした。
そこで思い付いたのが、一体成型のアルミニウム管体とウインドウェイなので「アルミパテ」を使うということです。自動車のアルミホイール補修に最適、耐熱温度はなんと100度、老朽化の心配は無い、いいことずくめですね。
作業前のマスキング
作業を始める前に、アルミパテがくっつかないようにマウスピースの周りをマスキングしないと、ということで、プラモデル用のマスキングテープを張りました。
ウインドウェイ内部をサンドペーパーで磨いて綺麗にして、充分に乾燥させてからテープを張りました。そのほうが作業が楽なので。
アルミパテ作業開始
さて作業開始です。アルミパテと硬化剤を混ぜ合わせて、プラスティックの板になすり付けます。
これをウインドウェイ内部にズボッと通して、ウインドウェイ表面にアルミパテを塗ることによって狭くしました。
数秒待ってからプラスティックの板を引き抜いて、ウインドウェイ出口に付いたパテの残りを除去します。道具は折った紙を使いましたけど、別になんでもオッケーです。
忘れるとまずいのは、アルミパテが乾いたあと、ウインドウェイ横側に付着したアルミパテを全て削ぎ落とす作業です。こうしないとウインドウェイに溜まった水分が管体へとうまく流れていってくれないので。
作業完了
最後に目の細かいサンドペーパーで、できるだけ正確にウインドウェイの形状が整うように、慎重に少しずつ磨きながら微調整をして完了です。仕上げるまでに相当な労力を費やしたんですけど、それでもかなり楽しい作業だったので、よしとしますか。
実際の狭さ
私がウインドウェイの掃除のために使っている道具で、レンタルCDショップの使い古した会員カードを切ったものがあるんですけど、このカードの厚さは1ミリ弱くらいです。
このカードをオーバートンのウインドウェイに差し込んでみると…
ウインドウェイの出口からエッジにかけての中間部分までカードの先端が出てきました。でもこれ以上は入っていかないんですよ。それくらいギチギチで、抜く時はちょっとチカラが必要なほどです。この狭さは凄いかも。
シェイクダウンテスト
さて、緊張のシェイクダウンテストですけど、解ったのは、かなり演奏性がアップしたことです。
・今までの問題だった2オクターブ目のEが、綺麗に出るようになった。
・音色が気温の変化に影響されなくなった。
・ダブルトーンになったり音自体が出なくなる、というやっかいな特性が消えた。
・息の消費量がかなり少なくて済むようになったので、ロングトーンが楽になった。
・全体の音量が小さくなったので、室内での演奏でも音量を気にしなくていい。
・元々全体的にやや高めだったピッチが、全体的にほぼ標準のピッチ(A=440Hz)にまで下がった。
・吹き込む息に対しての抵抗感が以前よりも更に強くなり、ビブラートなどの表現を付けやすくなった。
悪くなったところを強いて挙げるならば
・音量が大きい楽器とのセッションでは、オーバートンの音量が小さいので音が目立たない。
こんなところですね。
息の瞬発力が更に必要
ノーマルでさえ吹き込む息に対しての抵抗感があるのに、今回の作業でその抵抗感が更に強くなり、高音域では息の瞬発力が更に必要になりました。これは新たな「オーバートンを吹くための独特のテクニック」といえるでしょうね。人によってはものすごく吹きにくい笛だと感じるかもしれませんけど、私には合っているようで、とても吹きやすいです。
哀愁溢れる音色
ノーマルのオーバートンは、「しとやかな女性が声を枯らして泣いている」ような音色なんですけど、今回の作業によって、「きゃしゃで小柄な女性が声を殺してすすり泣いている」という感じの音色になりました。かなり哀愁を帯びてて、むちゃくちゃ気に入ってます。
えっと、最後にご注意を。今回紹介した作業は、金属用パテ成型に慣れていないと失敗する危険性が大きいです。もしご自分で作業してみようという人がいらしたら、あくまで自己責任において、かつ慎重に作業してください。
改造(マウスピース)
更に自分好みにするために
さてさて、このオーバートンをまたいじっちゃえ〜、という試みです。
Overton
Soprano D
今回の作業は、「外見を更に自分好みにしよう」と思って考えたもので、マウスピースの角を削る作業です。
このマウスピース部分を削る
「なんて勿体無いことをー!」と思われるかもしれませんけど、他のページにも書いたとおり、オーバートンのソプラノDをスペアとしてもう1本持ってるんです。実践用とスペアで、全く同じ機種を2本持ってるんですよ。ですので万一失敗しても安心なのです。
上がスペア、下が実践用
上がスペア、下が実践用
考えたくはないんですけど、実践用が万一、何かのトラブルで壊れて使い物にならなくなった時に、すぐにまた吹けるようにスペアを持っているというワケです。オーバートンは注文してもすぐには手に入らないティンホイッスルなので、あらかじめスペアを買っておいた、というワケなんです。まぁ、このスペアの出番がこないことを願っていますけど、いろんな場所で吹いていると、どんなトラブルがあるか解りませんから。
「そんなに貴重なティンホイッスルなら、最初から危険な改造なんてするなよ!」と思われるかもしれませんけど、やりたいんだから仕方がありません。この我侭で自分勝手な衝動は誰にも止められません。
閑話休題。さて、今回の改造作業も当然、実践用のほうをいじります。
用意する道具は、粗目の平ヤスリと、細かい目の平ヤスリ、細かい目のサンドペーパーです。
えっと、実は作業風景の写真を取る暇もなく、黙々とやってる内に完成しちゃいました。いや〜、すっごく根気が要るし神経を使う作業だったので、つい熱中しちゃって。
なので、マウスピースを加工して仕上がった改造版とノーマルを並べて、どういう風に違うのかを写真で紹介します。
まずは単体で紹介
まずは単体で改造版です。こういう風に削ったのでした。
改造版をベル側から見た写真です。写真では解りにくいですけど、マウスピースの角っこが管体よりも出っ張らないように仕上げました。
要するに、「ストレートな管体から、何も出っ張りを出したくないので、マウスピースの出っ張った部分を削ろう」と気持ちから今回の作業を思い立ったのでした。くっだらない改造理由でしょ。私ってこういう無意味でくだらない改造で遊ぶのも、大好きなんです。
更に細くなった
今回の作業で出来上がった改造版は、ノーマルよりもかなり内側にラインが入ってます。その分、マウスピースが細くなってます。
下が改造版
左が改造版
手前が改造版
手前が改造版
手前が改造版
右が改造版
ただでさえ細いマウスピースを更に細くしたのは、当初の目的通りですけど、削る度合いを判断するのにずいぶん神経を使いました。端から見れば、ばからしい労力の浪費ですね。でも私は、楽器についてはとことん形にこだわる性格なのです。この非常識な価値観はたぶん永久に治せないだろうなぁ。
ウインドウェイの肉厚
削った分ウインドウェイの肉厚が薄くなって、強度が落ちてるのは間違いないんですけど、実用に影響が無いと思った範囲で削りました。
右が改造版
右が改造版
下が改造版
左が改造版
下が改造版
マウスピースの裏側は、どこも削っていません。これはついでに撮影しただけなので。
下が改造版
今回の作業の目的は、「見た目のカッコよさを、より自分好みにする」だけなので、演奏性は変わっていません。
改造(トーンホール)
トーンホールを拡大する改造作業
私の持ってるオーバートンは、たとえノーマルであっても、G・A・B・C#のピッチが低めなんですよ。改造版だったら尚更で、更にその4つの音のピッチが低くなります。Gはそれほどでもないんですけど、C#に向かっていくにつれて少しずつピッチが下がってきます。吹き方を一時的に変えるなどして試行錯誤してみたんですけど、これはどんなに息のコントロールをしても補えるものではないと判断しました。ウインドウェイを改造した改造版でのC#のピッチなんて、ヒドイ時には10Hzくらい下がっちゃうんです。こりゃ気持ち悪〜い。
そこで、G・A・B・C#のピッチを標準ピッチにまで上げるために、各トーンホールを削って拡大してみようという試みです。G・A・B・C#のピッチをいじるということは、F#・G・A・Bのトーンホールを削って大きくすることになります。
加えて、トーンホールごとのピッチバランスを可能な限り平均律に近づけてみようというのも目標です。
今回改造するのは、また例によって改造版のほうです。この際だから徹底的にいじり倒しちゃえ〜。
作業開始
まず、細めの丸ヤスリを用意します。丸いトーンホールを削るワケですからヤスリも丸いほうが断然やりやすいですよね。
ここでの最重要項目は、必ず下の(低い音の)トーンホールから削ることです。なぜかというと、低い音から作業を始めることによって、音程が積算されて高いトーンホールに影響を及ぼすからです。トーンホールの大きさによるピッチは低い音から順番に積算されるために、低い音から始めないと、高い音での正確性が無くなってしまうので。音程が積算されるっていうのは、私の「たぶんそうなんじゃないかな?」という考えに過ぎませんけど、とにかく低い音からやっていったほうがやりやすいと思います。
さて作業開始。まずF#のトーンホールを慎重に削りながら、その都度ロングトーンで吹いて、チューニングメーターでピッチの確認をして、ピッチが低いようであればまたトーンホールを僅かに削り、これを繰り返してピッチを正しい位置まで上げます。次に同じ作業要領でGのトーンホールを削る、そしてAのトーンホール、Bのトーンホールと順番に上がっていって、最終的に全体の、トーンホールごとのピッチバランスを安定させるワケです。
ヤスリで削る時に注意したほうがいのは、管体の中に折りたたんだ紙を突っ込んでおくことです。でも別に紙じゃなくてもいいです。要するに、ヤスリで削ってる時にヤスリの先端部分で管体内部を傷つけないようにすればいいです。それから、うっかり手が滑ってヤスリで管体表面にもキズをつけないようにしたほうがいいでしょう。表面ならキズがついても気にしないという人はいいですけど。
ノーマルとのトーンホールの比較
「んー、大体こんなもんかなぁ?」とナットクできたので、作業を終えることにしました。では、ノーマルと改造版を比べて、実際にどれだけトーンホールが大きくなったか、並べてみましょう。
上がノーマル。下が改造版。
結構F#・G・A・Bのトーンホールが大きくなったでしょ。いや〜この作業には何時間もかかって、かなり根気が要りました。正確さを出すために、どのトーンホールも慎重にビクビクしながら作業しましたから。
シェイクダウンテスト
さて緊張のシェイクダウンテストです。実際にロングトーンと演奏をやってみたんですけど、見事にG・A・B・C#のピッチがほぼ修正されました! チューニングメーターで確認しても殆ど狂いは無いです! いかんせんキーメカニズムの付いてない笛ですから完全に平均律に合わせることは無理ですけど、可能な限り平均律に近づけることができました。大成功〜。
って、ピッチ確認しながら作業したんだからシェイクダウンテストの必要なんてないか。あはは。
あとがき
作業してみたいと思った人へ。この改造作業は、あくまでも自己責任でやってください。入手に苦労する貴重なオーバートンを改造するだなんて、そういう勿体無い作業をやる人が居るかどうか解りませんけど。
この作業をやってみて思ったんですけど、私が買った当時のオーバートンのソプラノDっていうのは、トーンホールごとのピッチバランスがホントに悪かったんだなぁと(最近のオーバートンはだいぶ改善されてるみたいですけど)。更にウインドウェイを改造したらピッチバランスの悪さがもっと顕著に出てしまったんですよ。私はティンホイッスル製作の専門家じゃないので、なんで顕著に出てしまったのかは全然解らないですけど、顕著になっちゃって「もうガマンできなーい」と思って今回の作業をすることに決めたのでした。
しかし本来、ティンホイッスルっていうのは、ここまで正確なピッチバランスを求める笛ではないらしいです。特にアイルランド伝統音楽においては、少々トーンホールごとのピッチバランスが悪くても気にしないで吹く人が多いらしいです。ピッチバランスよりも音楽全体の雰囲気や味を楽しむことが優先なんだそうです。ティンホイッスルのアイルランド伝統音楽でのアプローチについては、ヘルガさんのサイトに詳しく書いてあります。とても参考になるサイトなので、ぜひご覧ください。こちら。
Tin whistle & Penny whistle
(誠に残念ながら現在休止中)
逆に言えば、ティンホイッスルに対してここまでピッチバランスを求める私は、一般のプレイヤーさん達から見れば異常に見えるかもしれません。あはは。でも現代音楽をティンホイッスルで吹こうとする場合は、どうしてもピッチバランスが合っていないと私はイヤなんですよ。
実はですね、「トーンホールを削る」という作業は、管楽器の世界では「やってはイケナイこと」らしいんですけど、私はやっちゃいましたよ。結果的によくなったんだから、まぁいいんじゃないかなと。
ディクソンSV
改造(トーンホール)
ピッチバランスのバランス取り
さてさて、ディクソンSV 1ピースもトーンホールのピッチバランスを取っちゃえ〜、というページです。例の、すっかり恒例になったお得意のトーンホール削りです。
この作業にはクロマチック・チューナーであるSEIKO ST-1100を使いました。これは1セント単位で音程を測れるのでかなり便利です。
SEIKO
ST-1100
例によって、小さな丸ヤスリを使って、いちばん下のDのトーンホールから削って、一つずつゆっくり確実に慎重にトーンホールを削り、ピッチを確認していきます。ロングトーン&音階の上がり下がりをゆっくり何回も繰り返して、ピッチがまだ少し低いようだったらまた削って、また音を出してピッチを確認して、「よし、このトーンホールはこれでオッケー」となったら、やっと次のトーンホールに進んで同じ事を繰り返して、という、かなり根気の要る作業です。
で、仕上がりました。スペア用にもう一本買っておいたノーマルのSVと比較してみましょう。
上が改造版、下がノーマル
ノーマルのベルに金色のシールが貼ってあるのは、私が自分で「見分けがつきやすいように」と貼ったものです(元々はSVには金色のシールは貼られていません)。さて、もっと近づいて見てみましょう。
上が改造版、下がノーマル
どうでしょう? 見た目でもだいぶ各トーンホールが大きくなったでしょ。
ちなみに今回の作業では、F#の音だけはどうしても上がりきらず、10セントほど低くなっています。ま、10セントといえば半音の10分の1ですから殆どというか全く気になりません。他の音は全部+−ゼロになっています。
吹いてみてやっぱり思ったこと。いやぁ、やっぱり平均律に合ったティンホイッスルは吹いてて気持ちがいいです〜。たかが安物の笛ティンホイッスル、されど平均律に調律できてセッションにも堂々と合わせられるティンホイッスル、奥が深いですよね。
ディクソン1ピース DX001D 2008年モデル
というと、「めあのことだから、きっとまたウインドウェイを狭くしたんじゃないか」とか思うでしょ。ちが〜うんです。今まで確かにオーバートンとかショウとかクラークオリジナルとか、いろいろなティンホイッスルの息量を少なくするためにウインドウェイを狭くしてきましたけど、今回だけは、じゃーんじゃじゃーーーん! 私にとっては初体験! なんと、ウインドウェイを広げて、エッジも角度を鈍くして、低音部の反応を高めるための改造をしました。
「安ティンホイッスルの改造による性能向上」
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n251571
↑こちらが大変参考になりました。ウインドウェイ内部の上側だけを削って、わざとムダな息を増やすようにして、低音部での息の許容量を増やして、エッジの先端を僅かに縦に削って、全音域での息への反応を悪くしました。その結果、
もんのすごく吹きやすくなりました〜! 私は昔からどーしても息を多めに使う吹き方なので、ディクソンみたいなあまりにも少ない息量で吹けてしまう機種はちょっと苦手で、すぐにオーバーブロウしちゃってたんですよ。タンギングをほとんど使わなくてもオーバーブロウ気味だったんです。つまり1オクターブ目のピッチがやや高めになっちゃってて音がひっくり返りやすかったんですよねー。
で、何とかならないかなーと思っていたところに、上の人の記事の改造方法を読んで、あとは自分なりに考えて、「大前提として、笛全体のピッチバランスが狂ってしまわないように、ウインドウェイの内部の上側だけを削ろう。そうすればピッチバランスには影響は出ないし、ただ単にムダな息を消費するだけになる」と結論を出して、吹きながら小さな薄い平ヤスリでウインドウェイ内部の上側だけをガリガリガリガリ削ったのでした。もちろん最初は1オクターブ目のDと2オクターブ目のDの音だけをチューニングメーターで合わせてそれを基準にして、あとはチューニングメーターを見ないで、いろんな曲を何度も吹きながら、です。
チューニングメーターは、昔から使っている、クロマチック対応のSEIKO ST1100です。
ウインドウェイ内部の縦の寸法はノーマルに比べたら1ミリ以上広くなり、エッジは0.2ミリ近く平らに削りました。これで低音部から中音部がハッキリした音になって、なんと高音部も(私にとっては)のびのびとチョ〜速い息を吹き込めるようになって、今まで課題だった「低音部や中音部で息を弱いまま保とうとガマンしてテンパる、あの息苦しさ」という、演奏でのストレスがほぼ無くなりました。
次に、糸ノコの刃の先っぽを使って、ウインドウェイ内部の左右の端っこ、つまり管体と棒が差し込まれている境目を削って溝を作って、演奏中にウインドウェイに溜まった水分が左右に流れて管体へと逃げていくようにしました。こうすることによって低音部や中音部がコンスタントに出やすくなるからです。この笛はそこまでの精密な完成度は無かったので改造作業をした次第で。
次に、上の記事にも書かれているように、ウインドウェイ出口の下側の面取りも、精密ドライバーのマイナスを使って改造作業しました。角っこを斜めに削りました。これによって低音部が更にシッカリ芯が通った音になるからです。
さぁ、これで作業は終わりです。
ものすごく吹きやすくなった上に、音色はというと、これがまた、わざとムダな息を消費するように改造したために、いや〜、けっこう「シュピー」というようなカスレた、ショウみたいな好みの音色になりました。これも個人的にお気に入りになりました。
最後に念のためにチューニングメーターで笛全体のピッチバランスを確認してみても、ピッチは狂っていませんでした。大成功〜〜〜!
こうなると、もはやこの笛は、「少な目の息量でラクに吹けることが売りのディクソン」とはいえないでしょうね(笑)。でもそこが個人的に大きな魅力になった、と。息がラクなティンホイッスルを、わざわざムダな息を消費するように改造する人なんて、あまり居ないんじゃないかな? 意外といらっしゃるかな?
「ならディクソンにこだわらないで、始めから息が多めに必要なショウとかの違う機種にすればいいじゃん」って思うでしょうけど、見た目がお気に入りのこの機種じゃないとイヤなんです(笑)。
ただ、改造して一つだけ困ったことが・・・それは、ノーマルだった当初と比べると、音量がかなり大きくなっちゃって、音もかなり通るようになっちゃって、自宅ではなかなか思い切って吹けないことですね。1オクターブ目のローエンドでは管体が正常な意味で振動するほどシッカリ芯の通った音になった上に、2オクターブ目のハイエンドとか3オクターブ目なんてホントに「爆音」になっちゃって・・・(笑) ま、いっか。そういうティンホイッスルにしたかったんだし。
先のリンク先の記事の人、大変参考になり、誠にありがとうございました。と勝手にお礼を言ってみる。私ティンホイッスルの改造大好きなもんで。
・・・と、ここで後日談を。
ウインドウェイ出口の面取りですけど、上の写真の状態ではちょとだけ削りすぎたようで、低音部はズッシリ響いていたんだけど、長く吹いているうちに高音部のハイエンド付近がオクターブ下の音が混じるようになっちゃいました。たはは、ちょっと失敗。
で、面取りで削った部分に、車のウレタンバンパーやFRPエアロパーツの補修に使うHoltsのエポキシファイバーパテを盛って修復しました。ウインドウェイ出口の下側だけにパテを盛って角を作るのはちょっとコツが要ったけど、そこは元プラモデル改造のウデで、なんとかできました。しかし、そのあとの「どれだけ角のパテを面取りで削ればいいか」の加減が非常〜〜〜に難しく微妙でデリケートでした。0.1ミリ単位の誤差がすっごく影響するんですね。強めの息を多く吹き込むということを前提にして、低音部を強調させれば高音部にノイズが混じる、高音部を綺麗にすると低音部は一応出るんだけど息の許容範囲が狭くなる、そのちょうど真ん中辺りのちょうどいい削り具合の頃合いを見つけるのに、かなり時間と労力を使いました。パテを盛っては削り、削りすぎてはまた盛って・・・の繰り返しでした。で、やっとちょうどいい削れ具合になった次第で。その上で自動車用のタッチペン(つや消し黒)を塗って仕上がりです。
F1風に言うと、「いや〜、このベストセッティングを出すのには苦労したよ」というカンジでしょうか。
ちなみにこの改造をした結果、この笛で正しいピッチバランスで吹くための最適の息使いは、「2上げの息使い」が最適となりました。2オクターブ目に入ってからすぐの所で息をレガートよりかは少し強くする吹き方です。「1オクターブ目は弱く、2オクターブ目は強く吹く」という、安めのティンホイッスルの基本の息使いですね。この息使いでこの笛を吹くと音階のピッチにデコボコが出ず、いわゆるトーンホール音痴にはならないのでダイジョーブイなのです。
「2上げの息使い」(命名適当)
それにしても、マウスピース部分をいじると、本当に笛の特性がガラリと変わって面白いです。これだから改造はヤメられない。
ちなみに音色は先述のとおり、ディクソンとショウを混ぜたような音色になった上で音量かなり大きめ。吹き心地は、息の消費量が多くなったことの他に、エッジの角度を立てたためかウインドウェイの出口から出る息がエッジの角ではなく「面」に多く当たるようにしたためか、オーバートン(現ゴールディ)のように、吹き込む息に対する抵抗感がけっこう出てきました。なので吹き心地はショウとオーバートンを混ぜたようなものになりました。自分の好み的にけっこう吹き心地いいです。
これで3オクターブ目のFくらいまで出せてピッチバランスもほとんど合ってるのだから、トーシローによる最初のトライとしては上出来かな、と自画自賛。えへへ。これからももっと改造とか構造について勉強がんばるもん!
高音部や超高音部の出し方について。改造後は、高音部(2オクターブ目のB・C・C#、いわゆるハイエンド)とか超高音部(3オクターブ目のD・Eb・E・F)を出そうとすると、かなりの息量というか「息圧」を使うようになりました。高音部の多い曲を2〜3曲吹き終えただけで「ふうぅ〜〜〜・・・」となって頭がクラクラしてきそうなくらい、かなりの「息圧」を使います。まるでオーバートン(現ゴールディ)のような、吹き込む息に対する抵抗感と吹奏感です。で、そのためにやはり高音部や超高音部のピッチがやや上がってしまいます。大体15セントくらい高いでしょうかね。それくらいの強さで吹かないと綺麗な高音や超高音が出ない仕様になりました。その高音部や超高音部でのピッチを基準にして、それ以下の全音階を吹かなきゃならなくなった結果、A=443Hzくらいになりましたわ。ちょっと全体的にピッチ高いんですけど、1ピースだからチューニングできないし、まったくもう〜、手のかかる子ね〜、こ の 子 は!(←自分のせいでしょ)
ま、しゃーないです。音量もスザートよりも大きいんじゃないかっていうくらいの「爆音」だし、ソロ演奏用にでも使おうかなと思ってますけど・・・でも、まだやっていない改造があるんですよね。巷でよく言われている、例の、マウスピースの内側のブロック部分をロウや接着剤やパテなどで埋める「詰め物作業」です。そう、ディクソンはその部分が埋まっていなくてスッカラカンなんですよ。ウワサによると、詰め物作業をすると高音部が劇的に改善されて安定した音質になるそうですけど、この笛の場合はどうなるかはわからないところが、ちょっと怖いところ。高音部がどう変わるか、試しに他の(マウスピースの外れる)機種でやってみようかしら? で、いい結果が出たらこの笛にもやってみるかも。
しかーーーし! ウォルトンみたいなマウスピースを外せるタイプは作業がやりやすいけど、この笛は全管一体型の1ピースだから、歌口からしか詰め物を入れられないところが悩み。さて、やるとしたら、
この狭い歌口から何をどうやって詰めるか、ですね。今考え中なのです。・・・もしやるとしたら、ですけどね。
詰め物作業について調べていたら、このブログさんで、「D管よりも低いキーの(管体が長い)ティンホイッスルに詰め物作業をしたら、2オクターブ目が出にくくなった」と書かれていてビックリ! 機種だけじゃなくてキーによっても結果が変わってくるのね。笛によって高音が出やすくなったり出にくくなったり、正反対な結果が出るかもしれないわけで・・・
じゃぁもしかしたら、この笛に詰め物作業をやったら・・・ヤバイ・・・どーゆう結果になるかわからない。怖いから、やらないでおこう。だってあの狭い歌口からしか作業できないから、たとえ手軽なコマンドタブとかでも、元に戻したい時にめっちゃ苦労するか、最悪の場合は元に戻せなくて高音部が出にくいままになって、笛が使い物にならなくなる危険性が高いので。
あー、やらないでよかった。というわけで詰め物作業は、この笛に限っては中止〜〜〜! 最愛の笛を危険にさらしたくはないので。
やるなら他の笛でやってみようっと。
ウォルトン メロウD 2015年モデルで「詰め物作業」をやってみたら、やっぱり高音部が出にくくなりました。そういうものなんだなぁ。
あーーー、この笛にやらないで本当によかった・・・危ない危ない・・・
トーンホールと、ベルの改造
ま、この改造は余談みたいなもんですけど・・・
SVと同じく、この1ピースも、トーンホールが私にとっては小さめなので、半音運指を使いにくかったんですよ。それで、トーンホールの肉厚の表面部分だけを斜めに削って、指が触れる部分だけを広くしようと思いつきました。こうすれば半音運指をラクに使えます。表面部分だけを削ったので、ピッチには影響しません。
G、A、Bのトーンホール
D、E、F#のトーンホール
ちなみにピッチバランスはかなり安定しているので、調整する必要がなかったので、その作業はしませんでした。
さて、お次は、このベル。
ベルに白いプラスチックの輪っかがはめ込んであるんですけど、元々は輪っかの端っこが管体から出っ張っていたので、「完全なストレート管じゃなきゃイヤ!! 少しでも管体から出っ張りがあるのはイヤ!!」というストレート管完璧主義の私は、ベルの輪っかの出っ張りをヤスリで平らに削って管体と同じ太さにして、更に自動車用のタッチペンで黒く塗ったのでした。これで完全なストレート管になって、全管真っ黒にもなって満足満足。こんなことにこだわるなんて、やっぱり私って芸術家タイプだよなぁ〜。
細い上に、マウスピースからベルまで何も出っ張りがない、究極のストレート管! サイコーーー!!
その他、一般的に知られているプチ改造方法
マウスピースを動かすチューニング
ウォルトンとかジェネレーションみたいな、管体にマウスピースを差し込んでるタイプで、セッションの時にピッチがズレてて困る場合があります。その対処法です。
Generation
Soprano D
Walton's
Standard Soprano D
このタイプはマウスピースを動かしてチューニングできることが多くて、実際に演奏現場でもよく使われています。
まず、マグカップやコーヒーカップなどに40度くらいのお湯を入れます。40度というのは単なる目安で、熱すぎるお湯はダメということです。機種によってはマウスピースが変形しちゃうので。そのお湯にマウスピース部分を2〜3分間ほど浸します。
2〜3分間経ったらカップから取り出して、管体とマウスピースを持って、左右にねじるように回しながらマウスピースを抜きます。
マウスピースが抜けたら、管体に付着していた糊を拭き取っておいたほうがいいでしょうね。
再度マウスピースを差し込んで、マウスピースを動かしながら吹いてピッチを合わせます。
ジェネレーションは、A=445Hzから446Hzくらいを基準にチューニングします。
ウォルトンのスタンダードは、A=442Hzから443Hzくらいを基準にチューニングします。
無理矢理A=440Hzに合わせると、笛の特性がガラリと豹変しちゃいます。そのまま吹き続けていると、雑な息使いしかできなくなっちゃうんですよ。
今まで苦労してマスターした微妙な息使いのテクニックが失われてしまうという、落とし穴です。チューニングは便利で手軽そうに見えますけど、この落とし穴には注意してください。私も一度この落とし穴に落ちて、苦労した経験があるので。
お湯で温めても外れない時
お湯で温める方法でもマウスピースが外れない時、その時はどうやってマウスピースを外すのかを紹介します。
お湯で温めても外れないマウスピースの機種の代表的なものとして、ウォルトンのギネスがあります。
Walton's
Guinness Soprano D
また、ファドーグの一部のモデルにも、お湯で外れないモデルがあるようです。
Feadog
Brass Soprano D
ここでは、ウォルトンのギネスのマウスピース取り外し作業をしますけど、作業の方法は、どれでも同じ要領です。
ライターで管体をあぶって、マウスピースを外す作業です。ライターは100円ライターで充分です。
この作業は、ひとつ間違えばマウスピースを溶かしてダメにしてしまう危険なウラ技なので、作業要領をよく読んでから作業してください。
ライターであぶる作業は、マウスピース自体をあぶったらマウスピースが溶けちゃうので、重要なのは、「あぶる位置を管体のみにする」ことと、「あぶる時間を短時間にして、何回かに分ける」ことです。
管体が熱くなるので、管体を持つほうの手には、何かしらの手袋をはめたほうがいいでしょう。
あぶる位置と管体からの距離は、写真の通りです。
あぶる位置と距離はこれくらいで
これで、あぶりながら管体を回します。管体のラベルがコゲないように、素早く回したほうがいいです。
管体をクルクルっと
ラベルがコゲないように注意
管体を2〜3回ほど回転させてあぶったらひとまずヤメて、管体が完全に冷えたら再度同じあぶり方をする、これを何度か繰り返します。
あぶるのは、これで終わりです。管体とマウスピースを握って、軽く雑巾を絞る要領で、ねじりながら回します。
やれやれ、やっと外れた〜。
ライターであぶる作業を繰り返すのは2〜3回でいいと思いますけど、2〜3回やってもマウスピースが外れない時は、また同じ作業を繰り返してください。
それから、マウスピースの固着を防ぐ方法を紹介します。
ギネスのマウスピースは、一度は外れても、差し込んでしばらく使ってると、また差し込み部分が固着してくるので、固着を防止するために管体の差し込み部分をサンドペーパーでジョリジョリ削って、黒い塗装を綺麗に剥がしておきます。
注:ファドーグでは、この作業をする必要はありません。
このくらいの範囲を削る
これでまた差し込む
うっかり削りすぎて差し込み部分がユルユル気味になったら、ジョイントグリスを買ってきて、差し込み部分に厚めに塗ればいいですよ。ユルすぎず固すぎずの丁度いい抵抗になります。
ウインドウェイに溜まった水分
演奏中にウインドウェイに水分が溜まっちゃって、音が出にくくなった場合は、演奏の切れ目の時に、エッジの上に指を当てて息を強く吹き込みます。
または、トーンホールを全部塞いで、更に右手の(というか管体末尾側の)小指を、ベルの部分(管体末尾の穴)に当てて、その状態で息を吹き込みます。息の逃げ場がウインドウェイの出口しかなくなるので、勢いよく水分が出て行きます。
切れ目のない演奏では、エッジに指を当てる方法はできないですよね。この場合は、演奏中のブレスの時にマウスピースから唇を離さないで、ブレスと同時に水分も吸い取る方法がいいです。
演奏後に水分が凍った場合は、使い古して不要になったカードを用意して、ウインドウェイ内部を通せるような大きさにハサミで切ります。
最初にウインドウェイに息を数回吹き込んで暖め、カードを使って吹き込み口側からウインドウェイ内部を突つく。これを何度か繰り返します。
準備さえできていれば、ぬるめのお湯にマウスピースを浸すほうが早いです。
ウインドウェイの汚れ
ひとつのティンホイッスルをある程度の期間吹き込んで、ウインドウェイの中がだいぶ汚れて困ったという時のために、ウインドウェイ内部の掃除の方法を紹介します。
一番確実で、隅々まで綺麗になるのは、固形石鹸を使う方法です。洗面所などに置いてる固形石鹸がありますよね。
まず、ウインドウェイの出口とエッジの間にある四角い穴に、あらかじめハンカチの端っこなどの布を入れて、ウインドウェイの出口を塞いでおきます。
洗面所などに行って、普通に手を洗う要領で、固形石鹸を水まみれにします。すると石鹸の表面が水でグニャグニャになりますよね。グニャグニャになった固形石鹸の表面を、爪を使っても何でもいいので削り取ります。
その削り取った石鹸をウインドウェイに詰め込んでいきます。石鹸を削り取ってはウインドウェイに詰め込む、これを繰り返して、ウインドウェイが塞がっちゃうくらい詰め込みます。
使い古しのクレジットカード、あるいはガソリンスタンドやレンタルCDショップの古い会員カードなどを用意して、ウインドウェイ内部を通るような大きさにハサミで切ります。カードの材質はプラスティック系統のものが無難でしょう。そうしないとウインドウェイ内部に傷が付いちゃうので。
このカードでウインドウェイ内部をこさぎます。ある程度までこさいだら、始めに入れておいた布を取り除いて、水道の蛇口にマウスピースをつけて洗い流します。洗い流しながら、時折カードでまたウインドウェイの中をこさぐ、これを繰り返して、石鹸のカスが取れるまで繰り返します。
中性洗剤を使う方法も、要領は固形石鹸と同じです。あらかじめ、ウインドウェイの出口とエッジの間にある四角い穴に布を詰めて、中性洗剤を直にウインドウェイに注入し、プラスティックのカードで、やはりこさぎます。
布を取り除いてから、水道の蛇口にマウスピースをつけて洗い流します。洗い流しながら、時折カードでウインドウェイの中をこさぎます。中性洗剤の泡が無くなるまで洗い流してください。
固形石鹸、中性洗剤、どっちの方法でも、水道で洗い流す時に、石鹸や洗剤の匂いが残らないように、よく洗い流すことですね。よく洗い流しておかないと、演奏中ウインドウェイ内部に水分が溜まった時、ブレスで水分を吸い取ったら、石鹸や中性洗剤の素敵な味を味わう経験ができちゃうので。石鹸や中性洗剤は無害ですけど、美味しい味ではないでしょうから。
できれば最後にやっておいたほうがいいことは、ウインドウェイの中に残った水分をよく乾かすことです。
割とよく水分を吸収する紙を用意します。ノートのページの切れ端やメモ用紙でもいいです。それを、ウインドウェイ内部を通せるように重ね折りにします。
これをウインドウェイ内部に差し込みます。
数回出し入れするようにして通します。そうするとかなり水分が吸い取られます。
ウインドウェイを完全にカラカラに乾かすためには、すぐにケースなどに入れないで、しばらく放っておくのもいいでしょう。
熱によるエッジの変形
マウスピースがプラスティックでできているタイプで、クラークのスイートーンのようなタイプですとエッジがかなり薄いために、炎天下に長時間放置してしまうとエッジが変形してしまう場合があります。買い直すのは勿体無いので修理してみましょう。
修理は、元のエッジの幅に合わせて薄いプラ板を切り、それを接着剤で取りつけます。
元のエッジと同じ位置に取り付けて、ウインドウェイからの距離を同じにしないと、笛全体のピッチが狂っちゃうので注意してください。
ウインドウェイとエッジとの距離は、近いほどピッチが下がり、遠いほど上がっちゃいます。「ほんとにぃ〜?」と思った人、一度やってみてはいかがでしょうか? けっこうピッチの上下がシビアに出ますよー。
プラ板で作ったエッジのウインドウェイ側を斜めに削ることも忘れずに。
こんな簡単な作業だけで、変形したエッジのティンホイッスルが、また実践で使えるようになります。
ジョイント部分の緩み
管体がプラスティックのタイプで、ジョイント部分が経年変化で緩んできた場合の対処法です。ジョイントが緩んできやすいのは、ディクソンのチューナブルとかスザートのチューナブルなどですね。
Dixon
Soprano D tunable
Susato
Soprano D tunable
ディクソンは、長年使っていてチューニングなどで何度も抜き差ししていると、ここの部分が擦り減って緩んできます。
対処法は、マウスピースの末尾の部分に水性の塗料を薄く塗るのがいいかもしれません。
ディクソンの場合、ジョイント部分を塗装するのがイヤだという人は、ジョイントの差し込み部分にロウを厚めに塗るか、あるいは、配管業者さんが使っている水漏れ防止用の「シールテープ」をジョイント部分に巻きつけるのがベストでしょう。
スザートのジョイント部分のゴムシールも、経年変化でへたってきます。
シールは特製の極細なゴムなので、他のゴム製品での代用は難しいでしょうね。
新品のゴムシールが無い場合、配管用のシールテープで代用できます。あるいは、ジョイントグリス(コルクグリスではありません)をジョイント部分に塗るのもいいテです。コルクグリスは、プラスティックを劣化させてしまうことになるので、ジョイントグリスがいいです。
でもほんとに応急処置ですから、できるだけ早めにゴムリングを手に入れたほうがいいです。ちなみに東京のEMP(アーリー・ミュージック・プロジェクト)さんでは、ゴムリング単体で手に入るそうです。EMPさんのサイトはこちら。
http://www002.upp.so-net.ne.jp/emproject/
トーンホールの傷
ディクソンとかスザートとかのプラスティック製ティンホイッスルを、うっかり何かにぶつけてトーンホールに傷が付いて、そこの音のピッチが僅かに上がっちゃった場合の対処法です。
欠けてしまったトーンホールは、ラッカーパテで修理するといいです。おもちゃ屋さんで売ってるラッカーパテで充分でしょう。
これをトーンホールの欠けた部分に塗って、仕上げは細かいサンドペーパーで丸くしましょう。
ただ、ディクソンの場合は管体がPVCのため、ラッカーパテの乗りが悪く、はがれてしまうこともあるようなので、ゼリー状の瞬間接着剤を塗って、完全に乾かしてからサンドペーパーで形を修正するのがいいかと思います。相手がディクソンのようなPVCの場合は、ラッカーパテよりもゼリー状の瞬間接着剤のほうが数倍食いつきも耐久性もあるので。
管体内部の汚れ
長期間ティンホイッスルを吹いてきて、管体内部にいろんな汚れが付いて困った、という時の、掃除の方法です。ほとんどのティンホイッスルには掃除棒は付いていませんので、管体内部の掃除には困りますよね。
リコーダーを扱っている楽器屋さんに行って、「先っぽにガーゼとかを通せる、穴の開いた掃除棒をください」と頼みましょう。
掃除用のガーゼを切ります。ガーゼはできるだけ長くて細いほうがいいです。
これにガーゼを通して…
クルクルっと、掃除棒を包むように巻いて…
管体の末尾から通して、ガーゼがほどけない方向に回転させて掃除します。この場合は左回りに回します。
オーケストラでよく見るクラシック楽器のフルートがありますね。フルート用の掃除棒で、ティンホイッスルの管体を掃除してもいいでしょう。フルート用の掃除棒は金属性が大半ですけど、別に金属でも使って大丈夫です。
ピッコロ用の掃除棒も思いつくかもしれませんけど、ピッコロ用の掃除棒は頭管部を外して掃除することを前提に作られてるので、短いんです。20センチもないんですよ。それをティンホイッスルに使うと、管体の奥までは掃除できないんです。ですのでフルート用の掃除棒がいいです。
掃除の要領は同じです。掃除棒を包むよーにガーゼをクルクルっと巻いて、それを管体末尾から入れて、ガーゼがほどけない方向に回転させて掃除します。
掃除棒なんてわざわざ買うのはイヤだという人は、自分で作りましょう。といっても、用意するのは細い木の棒とガーゼだけです。
木の棒を包むように、ガーゼをクルクルっと巻いて…
これを管体の末尾から通して、ガーゼがほどけない方向に回転させて掃除します。この場合は右回りに回します。
木の棒ではガーゼがほどけやすいので、根元をしっかり握りながら回したほうがいいです。
掃除棒に針金を使う方法もあります。ティンホイッスルの全長の三倍くらいある長さの針金を用意して、それを真ん中から曲げます。曲げた部分は楕円形になっていればいいです。
楕円形の部分を残して、あとはプライヤーとかペンチなどで綱状に巻きます。
楕円形の部分にガーゼを通して、あとは同じ要領です。針金を包むようにガーゼをクルクルっと巻いて、それを管体末尾から入れて、ガーゼがほどけない方向に回転させて掃除します。
ブラシを使って掃除する方法もあります。試験管の掃除に使う専用のブラシもいいでしょうけど、手に入りにくいですし、ティンホイッスルの管体には短かすぎるものが多いので、苦労して手に入れる意味はあまり無いと思います。ここは、DIYセンターなどで売っている、細いパイプ掃除用のブラシを使うといいでしょう。いろんな長さのものがあるようなので、ティンホイッスルに合う長さのものもあるのではないかと思います。それを管体末尾から入れて回転させて、管体内部をジャリジャリ磨きます。あとは先ほどのガーゼを使った掃除法で、管体内部のカスを拭き取っておくと、更に綺麗になります。
外部サイトの改造講座
「安ティンホイッスルの改造による性能向上」
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n251571
どれも、ものすごく詳しく書かれていて参考になります。