持っているいろんなピッコロとファイフを自分が吹きやすいように、自分に合った改造をした記録をまとめました。
改造はどこまでも自己責任で行ってください。失敗しても責任は取れませんのであしからず。
--- Skip Healy(スキップ・ヒーリー)ピッコロ ソプラノD管 ---
歌口手前を削る改造
私のヒーリーピッコロの場合、他のピッコロに比べて、かなり歌口が狭いんですよね。私は下唇がちょっと厚めなので、下唇と肌との境目に歌口を当てると、エッジがどうしても手前に来すぎちゃって、いい音が出なかったんです。いい音が出るスポット「スイートスポット」がすごく狭かったんです。スイートスポットを探すのに毎回かなり苦労していました。
さてどうしたもんかなーと思い、そうだ! 今まで吹いていた、ノーマルでも吹きやすかったディクソンに似せるために、歌口の手前部分を削っちゃえばいいんだ! と思って改造を思い立ちました。
ディクソンに似せるといっても、ディクソンそのままの歌口の形と大きさでは大きすぎるんですよ。それで研究を重ねた結果、私にちょうど合った歌口の大きさはディクソンとヒーリーの中間くらいだということが判明したので、そうなるように歌口手前だけを削ることにしました。
逆に言えば、ディクソンの歌口は私にとっては大きすぎて、完全に昔からのクセになっている、「下唇と肌との境目に当てて『位置決めの当たり』を付ける」時にエッジの位置が上に来すぎちゃって、ノーマルでも歌口手前部分を少し多目に下唇で覆わなければいけなかったんです。でもそれだと下唇にすんごい違和感を感じてイヤで、かといってヘッドを回して調整しようとしても今度は息の向きがなかなか合わなくて困ってたんですよねー。
だから「歌口の垂直方向の大きさはディクソンとヒーリーの中間くらいがベスト」ということが、何ヶ月間もの研究と試行錯誤と練習の結果わかったんです。なので歌口手前だけを多目に削れば良いという結論になりました。この結論が出るまでだいぶ苦労しましたよ。
これはもう一般的な改造ではなく、私の唇に合うための改造ですから、当然皆さんの参考にはならないでしょうね。
改造成功しました。↑わかるでしょうか? 丸ヤスリで歌口手前を丁寧に丁寧に時間をかけて、慎重に少しずつ削っていき、その度に音出しをして変化を確かめて、納得がいかなければさらに少しだけ削る、これを繰り返して、やっと自分の唇に合った歌口手前の削り具合になりました。
この改造によって、息がぴったりエッジに当たるようになって、いや〜、信じられないくらいにいい音が出るようになって音量もかなり大きくなって、これがヒーリーピッコロの本来の性能なんだな、と実感して感動しました。
歌口手前を削っただけでこんなに吹きやすくなるなんて・・・嬉しい!
問題なのは私の下唇がやや厚めなことであって、おまけに先述のとおり、昔からの習慣で、下唇と肌との境目に当てて「位置決めの当たり」を付けるクセが付いているため、今回の改造をするしかなかったんですよね。
でも結局は今回削った部分は口をつけた時に下唇で全部覆われるんだから、吹く時の歌口自体の大きさが変わるわけではない、これが重要なんだと思います。
だから結果的には改造していないノーマルの音が出ることになる。ここが狙いだったんです。
自分に合った改造をするというのは本当に楽しいです。
この改造をやってから、今まで悪戦苦闘していた音出しがウソみたいに難なく出せて、あっけなくて拍子抜けするくらいに高音部まで割と綺麗な音を出せるようになりました。今までの苦労はなんだったのよー?(笑)
やっぱり闇雲に練習するんじゃなくて、「なぜ上手く綺麗な音を出せないのか」を熟考して研究して頭を使いまくって、それから練習や改造に取り掛からなきゃ絶対に失敗するなーと、そう思います。
しかしそれから数か月後に、寝ぼけてうっかりエッジの息が当たる水平部分を丸ヤスリで削ってしまって、エッジ全体が楕円形になってしまったんです。横笛では最も大事な心臓部なのに完全に私のミスでした。
「しまったー!! これではアンブシュアカットが施されているのにエッジを楕円形に削ったら、その分エッジの肉厚が薄くなって高音が出なくなるかもしれない!! 一生の不覚だー!!」
と落ち込んでいました。
まぁ落ち込んでいても始まらないので早速音を出してみましたところが、なんとこの状態でも普通に2オクターブ目のハイエンドのC#まで出るじゃないですか! 強く吹けば3オクターブ目のEくらいまでも出せました。これには本当に胸を撫で下ろしましたよ。あっぶなーーーい。でもよかった。
ただエッジの肉厚が薄くなった分スイートスポットは狭くなりましたが、息の向きさえ合わせれば何の問題も無く上記の音域が出ます。ややシビアな息遣いが必要にはなりましたが、私が間違えなければいいだけの話なので無問題なのです。ほんとによかったー。
ジョイントを奥まで全部差し込むための改造
※うぬぼれるつもりは毛頭ありませんが、以下に書いている改造作業は、自動車板金修理士としての経験と知識が割とある私だから成功したのかもしれません。かなり繊細な技術と知識を要求される作業だったので、私でも作業中に集中力を切らせたら失敗していたかもしれません。それくらい難しくて尚かつ後戻りのできない作業ですので、自信の無い方は絶対に以下の改造作業はしないでください。するならば、どこまでも自己責任でお願いします。失敗されても私は責任は取れません。
このピッコロの場合、ジョイントを奥まで全部差し込もうとすると、胴部管内側のグラナディラの出っ張りと頭部管のチューニング・スライドの銀製スリーブの先っちょがぶつかり合って、ジョイントが奥まで全部差し込めず、メいっぱい差し込んでも1.5ミリほどミゾが見えている状態でした。
1.5ミリ分のミゾが見えている
もちろんヒーリーさんはそういう風に作ったのは充分わかっていますが、私の好みとして全部差し込めないとなんか気が済まないので(笑)、改造してみました。
さて作業開始。写真左の頭部管の銀製スリーブの先っちょを平ヤスリで慎重に慎重に削って、1.5ミリ分短くします。銀製スリーブが変形しないように丁寧に時間をかけて平ヤスリで削ったら、すぐにシルバーポリッシュを付けた1000番のサンドペーパーで先っちょの表面仕上げをしてツルツルのピカピカにすることが大事なんですよね。じゃないと差し込みが固くなっちゃうので。
そして改造作業完了。
ご覧ください。完全に奥までピッタリ差し込めたでしょ。
ここまで差し込んでも、ジョイントを抜き差しする時にはあまり力は要らないように、つまりジョイント部分の薄くなっているグラナディラを痛めないように、先に書いた備忘録の作業要領に従って、元々キツめだったジョイントをあらかじめほんの僅かに緩めに加工しておきました。それこそミクロン単位で削っただけです。
あまり緩くするとジョイントから息が漏れちゃいますから本当に気をつけて作業しました。
そこら辺の微妙な削り具合にはすっごく神経を使っちゃって疲れましたけど、これは「やり遂げた〜! がんばって成功させたぞ〜!」という心地よい疲れでした。
なにせグラナディラは固いとはいえ、いかんせん木ですし、おまけにジョイント部分は肉厚がすごく薄くなってるから、ジョイントを抜き差しする時に少しでもグラナディラに余計な力をかけたくなかったんですよ。ヒーリーさんの作った笛ですから大丈夫だとは思ったけど私は心配性なので、今回の改造をしました。
もちろん抜き差しする時にはグラナディラ管体は握らずに、双方のジョイントの銀製部分だけを握って抜き差ししています。ちょっと神経質になりすぎかもしれませんが、これくらい気を使ったほうがジョイントのグラナディラも長持ちすると思うので。
胴部管と頭部管の両方のジョイントの、それぞれ銀同士が擦れ合うスリーブ部分を、シルバーポリッシュを付けた1000番のサンドペーパーで何十分もかけて磨き抜いて、スリーブの摩擦熱による膨張を戻すために丸一日寝かせて、それを数日間繰り返したことが勝因でした。
プロの自動車板金作業でコンパウンドを1000番のサンドペーパーに付けて表面の最終仕上げをする作業を多くしていたので、それが今回役に立ったのだと思います。
この作業のおかげで、ジョイントは無理なく奥まで全部差し込めるようになったし、チューニングスライドの抵抗もキツすぎず緩すぎずの、ちょうど良い抵抗感になりました。実際に15分〜20分(これが慣らし序盤の上限時間ですが)吹いてみても息漏れは全くありませんでした。改造大成功〜!!
※金属製のフルートのジョイントにも同じことが言えますが、製作過程で手作業でジョイントのすり合わせをしているので、どうしてもロットごとにキツめだったり緩めだったりするそうです。私のはキツめだったというわけですね。
ちなみに、銀製とはいっても純銀ではなく、ジュエリーなどにもよく使われるスターリングシルバーらしいです。銀が92.5%で、残りの7.5%が胴やアルミニウムを使った、最も硬くて頑丈な銀合金らしいですね。このスターリングシルバーがヒーリーピッコロのジョイントやフルールにも使われているらしいです。Healy
Flute CompanyのサイトのメンテナンスFAQのページに、そう書かれていました。
スターリングシルバーがそういう金属だということは今まで知りませんでした。お恥ずかしい限りで。。。(^_^;)
それにしても、円筒管ストレートタイプのジョイントによく見られることですが、なぜこのように一番奥まで差し込めないものが多いんでしょうね?
指穴2つ分のショルダーの改造
研究と練習を重ねた結果、このヒーリーに限ってはディクソンSVと同じく、指穴を指のハラで押さえるのではなく、爪がこすれそうなくらいチョ〜指先で押さえると、ほとんどチカラを入れずに指穴からの息盛れも全くなくて半ずらしもとてもスムーズにできることが判明しました。
ですので元々付けてもらっていた指穴のショルダーを更に1ミリほど削ることにしました。削ったのは右手中指のエンドホール側と右手薬指のクラウンキャップ側の2箇所のみです。
それぞれたった1ミリ削っただけでとても押さえやすくなったおかげで指のチカラもかなり抜くことができるようになって、そのおかげで半ずらしも格段にやりやすくなったので、脱力して12音階をラクにバリバリに出せるようになりました。良いことずくめです。
やっぱり自分に合った改造というのは本当に大事だなーと思います。
ディクソンDX001DやディクソンSVの指穴にも全く同じ改造を施していたので、やっぱりこの改造は私の指の作りと半ずらしテクに合っているようです。
--- YAMAHA YRF21ファイフ ソプラノC管 ---
ケルトの笛屋さんのフォーラムのログを参考に、ヤマハのファイフYRF21 8穴ファイフを、6穴C管アイリッシュピッコロに改造しました。
左手人差し指の穴と左手親指の穴をテープで塞いで、オフセットされていた右手小指の穴をドリルで新たにインラインの位置に開けることで、6穴C管アイリッシュピッコロとして使えるようになりました。ケルトの笛屋さん、ありがとうございます。
こんな風になりました。6穴ですから裏側にはサムホールは開いてません。
そのうちに、テープで塞ぐんじゃなくてちゃんとパテで埋めたいところです。
手軽な改造ができてよかったです。
--- Dixon(ディクソン)アイリッシュピッコロ ソプラノD管 ---
Dixon
DXTradP(個人的な愛称:ディッ金)
Dixon
DX015D(個人的な愛称:ディップク)
この2本なんですが、写真からはわかりにくいですけど、2本とも、お馴染みの作業で歌口手前を丸ヤスリで1ミリほど削ったら、特にDXTradP(愛称:ディッ金)がよく「当たる」ようになってくれて驚きました。私のアンブシュアの息の向きに合ってくれたんでしょうね。
改造前は「自分の吹き方に合っていないから手放しちゃおうかな」と思ったこともありましたが、いえいえ、これだけ当たるようになってくれればずっと使い続けたいです。
自分の吹き方に合うように改造することって本当に大事だな、と思いました。
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それから、ディッ金(ディクソンDXTradP)のほうを、エッジの外側を平ヤスリで慎重に削りながらえぐってアンブシュア・カットを施した結果、
そうしたら、ディッ金にしては3オクターブ目のDまでだいぶ出やすくなって驚いてます。音源はこちら。今回の改造後のディッ金で吹いています。
--- PlayTec(プレイテック) PTPC300ピッコロ ソプラノC管 ---
モダンピッコロなんですが、改造の参考になるかなと思って書きます。
予想していたとおり最初は本当に音を出しにくくて難儀していましたが、自分の下唇の形に合わせるために頭部管の歌口の手前を丸ヤスリで削ることで、そしてエッジの表面を平ヤスリで平らに削ってアンブシュア・カットを施してエッジを薄く鋭くすることで、割とラクに2オクターブ目の最後まで鳴らせるようになって、自分でも驚いています。
アンブシュアの練習をがんばったおかげもあるんですが、それだけでは、まずここまで鳴るようにはならなかったでしょう。
(注:あくまでも私の下唇と吹き方に合わせた改造ですし、他の人が同じ改造を施してもよく鳴るようになるとは限りませんので、改造は自己責任でお願いします)
歌口手前を削り、息が当たる部分を平らに削ってアンブシュア・カットを作った
あと、頭部管を改造しても各オクターブのDの音だけが殆ど出なかったのですが、よく調べてみたらDの音を出すためのキーのタンポがトーンホールに密着してないことが原因だと気づきました。キーの部品自体が斜めに歪んでいたのでラジオペンチでキーを挟んでグーーーッとこじって調整したらDの音も普通に出るようになりました。
キーの歪みをラジオペンチでこじって直した状態
あと、右手小指のキー(Ebキー)の裏に付いている白っぽいシリコンみたいな樹脂製のバンプストッパー(とでもいうのか?)が、いかにも安物らしく買ったばかりの練習初日で取れちゃいました(笑)。
ぺいがんさんもやはり同じような体験をされたみたいで、私だけじゃなかったんですね。ぺいがんさんが薄い両面テープでくっ付けていたので私もそうしています。今のところは取れていません。
キーのメッキを剥がしてから両面テープで貼ればもっと接着力があるんでしょうけど、めんどくさいのでメッキを剥がさずに貼っています。また取れちゃったら今度はちゃんとメッキを剥がしてからくっ付けようと思います。
このバンプストッパーは、最下位の機種でも9万くらいはするちゃんとしたメーカーのモダンピッコロなら大抵コルクで出来ていて強力に接着されているんですけど、やっぱりPlayTecは1万円だけあって材質も取り付け方法も相当コストダウンを計っているようですね。
やっぱり安かろう悪かろうだなーと思いつつも、だからこそ調整と改造をしまくって性能と吹きやすさアップをすることが楽しいピッコロだと思います。
タンポはシリコンなどの樹脂ではなく普通に消耗品のものを使っているっぽいので、タンポが寿命で破れたらどうにかして修理するか、それとも一万円の元を取ったと思ってまた同じくらいの機種の買いなおしを繰り返すか、それはその時になってから考えます。
こうして劇的な変化を遂げて実践でも充分に使えるようになって一人前(?)のピッコロにのし上がったPlayTecは、今ではサボレンで大活躍しています。
--- Coulon Duffy(クーロン・ダッフィー)CD052ファイフ ソプラノD管 ---
ファイフですがこれもキー付きです。ですがやはり改造の参考になるかと思って書きました。
吹き心地を少しでもヒーリーに近づけたいと思ってやった改造作業です。歌口周りをフル改造してこーなりました。
歌口全体を広げて、ヒーリーと同じようにエッジ部分にアンブシュア・カットを施しました。おかげでだいぶ高音部が出やすくなりましたよ。