レビューは、あくまで個人的な感想に過ぎません。初めに必ずこちらをご覧ください。
これも専用コーナー
私がかつて愛用していたティンホイッスルは、オーバートン(現ゴールディ)のソプラノDです。普段はこればかり吹いてました。
Overton
Soprano D
ここでは、オーバートンのティンホイッスルについて詳しい解説を載せています。オーバートンに関する全てのことを紹介したくて、特別に設けた専用コーナーです。
ちなみにこのオーバートンは、現在では別の方に吹いていただいています。大変大切にしていらっしゃるようで、嬉しいです。笛も幸せだと思います。こちらの方です。
https://twitter.com/Oriver2112/status/674231047765102592
かわいい〜〜〜。
ティンホイッスルと女の子の組み合わせは、最初にやっていたティンホイッスル専門サイト「HIGHLAND」時代から今まで引き継いでます(笑)
オーバートンの魅力
丁寧な仕上げ
オーバートンのティンホイッスルは、職人さんが一本一本丁寧に作って仕上げています。大量生産による品質低下というものはありません。常にハイクオリティな製品が作られています。
Overton
Soprano D
私はソプラノDしか持っていないんですけど、丁寧な仕上げはどのキーの機種にも共通しているようです。
くわえる部分の形とウインドウェイ
くわえる部分が削られて、四角くなっていて、管体よりも細くなっているところが個性的です。オーバートン独特の形ですね。
ウインドウェイも狭いために水分が溜まりやすいんですけど、工夫を凝らした作りのおかげで、溜まった水分をスムースに管体へ逃がす効果があるようです。水分が管体へ逃げていかないと、低音部が出なくなったり、高音部で音割れしちゃいますからね。そういう点でも大丈夫でしょう。
ウインドウェイがだいぶ狭いため、吹き込む息に対する抵抗感が強く、他のメーカーの機種とはまったく違う性質を持っていて、とても個性的で興味深いです。
言い方を変えれば、クセが強いということですね。ジェネレーションなどの標準的なタイプを吹き慣れている人は「なにこれ、吹きにく〜い」と思うかも。まぁ、慣れるまでの辛抱でしょう。
表現を付けやすい
やや強めの息を必要とするので、息の瞬発力が無い人には演奏は難しいかもしれないんですけど、ちゃんと吹き込めば実にいろんな表現を付けやすいです。息の微妙な加減がダイレクトに音色になっていくカンジです。ウインドウェイとエッジの構造のおかげでしょうね。
オーバートンの得意とするところは、息の強弱によってかけるビブラートもその一つです。他の機種では難しくても、オーバートンならば比較的楽にビブラートをかけられるのが大きなメリットでしょう。その分息を多めに消費するので、息の点では楽ではないですね。
ビブラートをかけやすいティンホイッスルほど、息の消費量は多めになる。息が楽なティンホイッスルほど表現をつけにくい。こういう皮肉なジレンマは永久に続くでしょうね。あなたならどっちを取りますか?
哀愁を帯びた音色
オーバートンの音色は、実に哀愁を帯びています。「しとやかな女性が声を枯らして泣いている」ような音色で、これはオーバートンにしかない、独特な音色だと思います。
私は、オーバートンのソプラノDを、実践用に1本、緊急用のスペアに1本持っているんですけど、実践用のほうはウインドウェイを改造した結果、更に哀愁を帯びた音色になっています。例えるなら、「きゃしゃで小柄な女性が声を殺してすすり泣いている」というカンジの音色です。薄暗い裏通りのさびれた安い酒場に似合いそうですね。
管体が一体成型
個人的な好みなんですけど、管体が一体成型(いわゆる1ピースタイプ)なのはとても魅力的です。オーバートンは、管体からくわえる部分までが一体成型で、ウインドウェイの下側に細い棒が差し込まれているだけなんですよ。一体成型の管体で、管体の肉厚も厚いため、とにかく丈夫です。安心して扱える笛でしょう。
私が一体成型に固執する理由は、「部品点数が少ない分、故障の可能性が低いから」というのもありますけど、それは殆ど建前で、本音は、「シンプルであればあるほど好きだから」です。
材質の性質と寿命の長さ
オーバートンの魅力は、材質が全てアルミニウムということも大きなポイントでしょう。外見的にも、アルミニウム独特の渋い銀色の輝きを持っています。
それから、アルミニウムは錆びないところがいいですね。まぁ、錆びることは錆びるんですけど、錆びるのは空気に触れた表面部分だけで、その錆が自らの皮膜を作り、空気の流入をシャットアウトして錆び進行防止の効果を生み、結果的に錆びるのは表面部分だけ、という性質の金属ですから。
管体全部がアルミニウムで出来ているために、すさまじく寿命が長いです。アルミニウムは年月が経っても変形などしませんし、更に、消耗部品も使っていませんので、いつまでも腐食や摩耗をすることは無い笛と言っていいでしょうね。
アルミニウムは、寿命の長さの点では非常に頼もしい金属だと思いますけど、瞬間的な衝撃に弱いことが残念。うっかりどこかにぶつけたりすると見えないクラックが入ったり、運が悪ければポッキリ折れちゃうので。
衝撃さえ与えなければ半永久的にもつ、という点では、アルミニウムは陶器に似ているかもしれないですね。陶器と同じ感覚で、「オーバートンは落としたら終わり」と覚えておけばいいかと(笑)。
全体の形がかっこいい
そのまんまです。オーバートンは、とにかく見た目の、全体の形がかっこいいと思うんです。まぁ、こんなのは完全な主観なんですけどね。私はこの個性的な形に一発で魅了されちゃいました。
もちろん、価値観は人それぞれなので、かっこいいと思わない人も多数いらっしゃるでしょう。音色が気に入っているだけで形なんて関係無いと思っている人も多数いらっしゃるでしょう。演奏性のクセが面白いから使っているだけという人も…以下略。
何しろ、私がティンホイッスルを選ぶ基準の重要度は、「気に入る形かどうか>自分にとって吹きやすいかどうか>音色は後回し」という具合なので。
ソプラノD管のディテール
全体の外観
まずは、ざっと全体の外観から。
ウインドウェイ
ご覧のとおり、ウインドウェイが管体よりも細くなっています。オーボエのように見えたりして。
マウスピース先端部がこのように薄く滑らかに削られているので、唇にフィットします。
ウインドウェイ裏側
この部分は特に、職人さんが丁寧に手がけているので、仕上げが非常に綺麗です。
オーバートンは、見事に管体とくわえる部分が一体成型です、まるで彫刻みたいな印象です。
芸術品を眺めてる気分にもさせてくれて、ただ眺めてるだけでも幸せです。
エッジ周辺
エッジが急な角度で削られているため、息に対する抵抗感の秘密は、ウインドウェイだけでなく、このエッジにもあるんでしょう。
ウインドウェイ下側の肉厚により、エッジ周辺は剛性たっぷりの頑丈な構造です。
ただ、頑丈な構造だけあって、その分重たいですね。重たいのはオーバートンの宿命でしょう。
管体の頭から末尾まで
これだけ美しく削られているのには、つい見とれてしまいます。
G、A、Bのトーンホールです。
D、E、F#のトーンホールです。
管体の末尾、いわゆるベルの部分まで細かく丁寧に削られています。
これだけ丁寧に作られているんですから、手間賃がかかって値段が高いのもうなずけるというものです。だからといってコストダウン目的の大量生産に走らないのは、ユーザーを思ったように増やせない原因の一つだとは思います。オーバートンも、なかなかに頑固なメーカーだなぁ。
刻印のロゴ
これは、Dという刻印が彫られているので、D管ということです。
Dの刻印の裏側には、メーカーのロゴ「Overton」が彫られています。
「Overton」のロゴが若干斜めにズレているのは、「こんなもんズレてても演奏には支障はないからいいんだ!」というメーカーの姿勢なのでしょうか? できればロゴもきっちり真っ直ぐに彫ってくれないかなー。
付属カバー
オーバートンは、こういうカバーに包まれてから出荷されます。搬送の時に傷つくのを防止するためでしょうね。
ユーザーが手にしてカバーを開けると、綺麗に仕上がったオーバートンが出てくる、これが嬉しい緊張の一瞬なのです。
ソプラノD管の寸法
全長
「寸法を計ることに何か意味があるの?」と思われるかも。一応、「何かの参考になるかもしれないから計ったほうがいい」と答えておきますけど、本当はただの暇つぶしで計りました。
まずは全長いってみましょう。全長は301mmで、ほぼ30センチですね。他のティンホイッスルと大して変わらないです。
上から、オーバートン、クラークのスイートーン、ウォルトンのスタンダード、スザートです。
クラークのスイートーンのようにテーパード・ボアの管体に比べれば、ストレート・ボアのほうが長めの管体になるようですけど、その理由は…解りません。
管体頭部の寸法
どこの寸法なのか解りにくい部分は、赤い線を引いておきました。ジェネレーションとかの真鍮タイプに比べると、管体は僅かに太めですね。これを「太めでかっこ悪い」と捉えるか「ぽっちゃりした女の子みたいで可愛い」と捉えるかは、あなた次第。
他のメーカーの機種に比べると、オーバートンの頭部は小さいことがよく解るでしょう。
くわえる部分の寸法
ウインドウェイを形成している、最も大事な部分です。いかにここがきっちり作られているか、によって、そのメーカーが「真面目にやる気があるのか無いのか」が解ります。
横から見た画像ですけど、これは暇つぶしついでに計りました。
寸法からお解りのとおり、くわえる部分もストレートです。ここまできっちりした寸法なのは、私的にオッケーなのです。
私は、ティンホイッスルの細かい寸法については妥協を許さないんですけど、その反動で、普段の生活がずぼらなんでしょうね。
ウインドウェイ付近の寸法
ウインドウェイは、ノーマルでさえ、こんなに狭いんですよ。思わず「冗談はヤメて」と言いたくなります。
左から、ウインドウェイ出口の幅、ウインドウェイからエッジまでの距離、エッジ本体です。
特に、ウインドウェイからエッジまでの距離は、正確に作られていないと、笛全体のピッチがバラバラになっちゃって、まともな音階を出さなくて、「この笛終わってる〜」となるのですが、オーバートンは正確に作られているので、心配は無いですね。
4mmというのは、ウインドウェイの外側の高さです。こんな無意味な所まで計られて、笛にとってはいい迷惑でしょうね。
トーンホールの大きさ
指の細い人でも、特に問題なく押さえられる大きさです。これがウインドウェイ側です。
こっちが、ベル側のトーンホールです。
私は全てのトーンホールを、指のハラではなく、指先で押さえる例外的な方法なんですけど、それでも楽に押さえられますね。もっともそんな押さえ方をする奇特な人は居ないでしょうし、指のハラで押さえる、基本に忠実な人ならば、尚更心配無用です。
トーンホールごとの距離
DからEまでのトーンホールの距離がやや離れていて、私は最初は押さえにくくて戸惑いました。
それというのも、指先で押さえている、つまり指を立てていることが原因で、指を立てていると指の間がうまく広がらないんです。その後、指の広げ方を工夫して練習して克服したんですけど、苦労しました。
指のハラで押さえる、つまり指を寝かせて押さえる基本の方法ならば、こんなばからしい苦労とは無縁なのでご安心を。「楽に押さえたいのなら、お前も基本にならって指を寝かせて押さえろ!」と思われるでしょうけど、指先で押さえるのは半音運指のコントロールに便利なのでそうしているんです。私が自分で好んでしょいこんだ苦労ですし、ひねくれ者だと笑ってくれてもいいです。
本題からズレましたけど、オーバートンで最初に作られた機種であるテナー管を見ると、やっぱり同じようにDからEまでのトーンホールの距離が離れています。その流れで全部のキーのモデルも離れているのならば、何か深い企業秘密があるのかもしれないですね。…でも仮に、何も考えてなくて、「テナー管の場合はDとEが離れていたほうが押さえやすいから、何となく全部統一している」という理由しかないとしたら、それはそれで大笑いですけど。
トーンホールからベルまで
あらかじめ小指を管体に当てて構えて、C#の音を出した時(トーンホールを全部開けた時)に、管体が落っこちないようにする部分です。フィンガリングを工夫して、小指をあてずに、C#を出した時にDのトーンホールを単独で押さえて、落っこちないように工夫している人も居るそうですけど、私はそこまで器用な真似はできません。
トーンホールとベルの特徴は、他のメーカーのと、それほど距離に差は無いですね。いちばん下のスザートに近いかも。
管体末尾の寸法
管体末尾も、頭部と全く同じ寸法です。つまり本当にストレート管ということです。これって個人的にすっごい好き。ぴったりと寸法の整ったストレート管は、見ていて気分爽快だわ〜。
これがもし、1ミリでも違っていたら、たぶんフテ寝するか、腹いせに水玉模様にでも全塗装するだろうなぁ(笑)。
ベルの部分まで何も出っ張りがなく、本当にまっすぐです。正確に作られています。これもたまんなーい。オーバートンかっこいいよー。
ボアの内径と管体の厚さ
管体の肉厚があるために外見は僅かに太めに見えるんですが、実際のボア自体は標準的な寸法です。肉厚を厚くして、強度をアップしてるんでしょうね。管体の肉厚がやや厚いだけで、内径自体は他のティンホイッスルと殆ど変わらないです。
ブリキや真鍮に比べると、肉厚が厚いです。頑丈なのはいいことです。
ラインナップ全機種の紹介
1ピースタイプ
1ピースタイプは、チューニングはできません。各機種の音域は、譜面を参照してください。
Soprano F
Soprano E
Soprano Eb
Soprano D
私が持ってるのは、この
Soprano D です。
Soprano Db(C#)
Mezzo Soprano C
Mezzo Soprano B
Mezzo Soprano Bb
Mezzo Soprano A
Alto G#
Alto G
Alto F#
Alto F
Tenor E
Tenor Eb
Tenor D
Tenor Db(C#)
Baritone C
Baritone B
Bass A
Bass G
チューナブルタイプ
管体を伸縮させてチューニングできるタイプです。各機種の音域は、譜面を参照してください。
Alto G
Alto F#
Alto F
Tenor E
Tenor Eb
Tenor D
Tenor Db(C#)
Baritone C
注文生産のカラーリング
単色のカラーリング
オーバートンは、基本的にはアルミ地肌のものが主流ですけど、注文生産で、いろんな色や模様にカラーリングしてくれます。といっても、メーカーが用意した色や模様だけなので、金ピカ成金色とかアロハ模様などを注文しても、それは無理な注文というものです。
また、注文生産になるので、当然その分、入荷までの期間は長びくと思われます。忘れた頃に届く、とでも思っていたほうが、気が楽でしょう。
まず単色のカラーリングの紹介です。単色のカラーリングは全部で5色あるみたいですけど、他にもあるかもしれません。現物は持っていないので、自分で紙に描いてみました。
黒
青
緑
赤
紫
個人的には、アルミニウムの地膚がむき出しになった、渋い銀色のノーマルな状態が好きなんですけど、それを言ったら元も子もないか。
木目のカラーリング
木目のカラーリングもあります。私の描いた絵は虎のような柄に見えますけど、木目だと思ってください。
木目は更なる高級感があるカンジです。
木目といえば、オーバートンが厚めのアルミニウム管体を使っているのは、ウッドのティンホイッスルのような、こもったような音色を狙ったのではないか? という説もあるようですけど、はたして真相はいかに。
石に見えるカラーリング
石に見えるカラーリングもあります。
しっとりと落ち着いた印象です。絵は火山灰が降り注いだような模様になってますけど。
実験的なプロトタイプ
改造しないように
オーバートンのメーカーが作ったプロトタイプは、あくまでも実験的なプロトタイプで、普段の製作のラインナップには含まれていないようです。よくモーターショウで奇抜なデザインの車が発表されますけど、実際に発売されるのはごく一部ですよね。それと同じということで。
間違っても、ご自分が持っているオーバートンを、プロトタイプみたいに改造しようとは思わないようにしてください。アルミニウムという性質上、よほどの金属加工技術が必要でしょうから。
オーバートンのメーカーでは、こういう遊び心を持った製作もしているんだな、という風に見てくだされば幸いです。ちなみに、画像は私が自分で描いたものです。さすがに現物は持っていないので。
管体上部90度加工のタイプ
頭管部が90度に曲がっています。
なんだか、ファゴットみたいな感覚で吹けそうですね。
管体上部45度加工のタイプ
こういう風に、管体上部が45度くらいに曲がっています。
なんだかウインドシンセみたいで、かっこいいかも。
管体上下部45度加工のタイプ
こちらは、上下とも曲がっているタイプです。
これはサクソフォンみたいに見えるかしら?
横笛として使えるタイプ
普段と同じように縦にくわえても、腕や指はフルート感覚で構える、というタイプです。
いやぁ、プロトタイプとはいえ、発想がユニークで面白いです。とはいえ、このタイプが生産のラインナップに入って発売されたとしても、使うのはごく一部の人だけだったりして。
値段・入手法・入荷までの期間
値段
私がオーバートンのソプラノDを買った時は、日本円で18,000円でした。ティンホイッスルとしては、かなり高いですね。
Overton
Soprano D
18,000円(18,000JPyen)
その他の機種の値段については、ここに価格表を書くといろいろ問題があるでしょうから、オーバートンのサイトの価格表のページを見て参考にしてください。
入手法
さて、入手法です。まずは、メーカーに直接注文する場合です。メーカーに直接注文する時は、クレジットカードを作ってください。
次は、日本国内の通信販売です。オーバートンを扱っている日本の業者さんを紹介します。
次は、海外の通信販売です。オーバートンを扱っている海外の通信販売の業者さんを、知っている範囲で書いておきます。
入荷までの期間
私がオーバートンのソプラノDを発注した時は、ある輸入業者さんからきいたところによると、メーカーに在庫があれば2ヶ月以内に入荷する、とのことでした。私の場合は幸いにも在庫があったようで、1ヶ月半で届きました。これも普段の行いがいいから…のはずはなく、単にラッキーなだけだったんでしょうね。
それから、もう1本同じオーバートンのソプラノDをスペアとして現在持ってるんですけど、スペアのほうは、別の輸入業者さんに頼みました。在庫があったようですけど、入荷までには2ヶ月ちょっとかかりました。別の業者さん経由だと、やや入荷が遅かったですね。もしかしたら、後者の業者さんは、早く入荷させるための独自のルートを持っていなかったのかもしれませんけど。
以上の経験から、ソプラノDについてしか言えないのですけど、輸入業者さん経由なら、メーカーに在庫があれば、届くまでの期間は2ヶ月くらいが目安だろうと思います。
メーカーに在庫があっても、入荷までには2ヶ月くらいかかるので、メーカーに在庫が無い場合はもっと長期間待たなければならないようです。数ヶ月から半年以上かかるようですが、辛抱強く待つしかないでしょう。
また最近では、オーバートンの入荷までにはどんなに早くても最低数ヶ月かかることがあるようです。私が買った時よりも事態は更にキツくなってるようで。あ、そこのあなた、発狂しないでください。なんでそんなに時間がかかるのよー! と私も思ってるんですから。
メーカーから買い占めて個別に保存している、商売根性むき出しの要領のいい輸入業者さんがあったとしたら、その業者さんの裁量次第で早く手に入ることもあるでしょうけど、そういう輸入業者さんを探すのは難しいと思われます。
メーカーによっては、たとえ在庫があっても、わざと「注文が多くて在庫がすぐに無くなって、生産に追われて大忙しで大変なんだよ。だからすまないが当分の間待っててくれ」という、すっごく笑える「自作自演の嘘」をついているメーカーもあるようです。オーバートンのメーカーがそれをやっているのかは解りませんけど、そういう可能性も無きにしも非ず、と思っていたほうがいいでしょうね。
日本では「自分はありがたいお客様なんだぞ! 早く届けろ!」という態度が通用しても、海外ではそれが通用しないどころか、かえってメーカーの人の機嫌を損ねて、「客だからって、こいつはずいぶん態度がデカいな。じゃあこの客はもっと後回しにして、後から注文してきた他の客のほうを優先させて届けよう」という風に逆効果になっちゃうかもしれません。お客様感覚は心から排除して、心の中で悶々と入荷を願うだけにしたほうが無難でしょうね。もし本当に「自作自演の嘘」をつかれて入荷を遅らせられたとしても、それはあっちの海外メーカーの価値観なので、どうにもなりません。
オーバートンはハンドメイドゆえ、どうしても生産本数が少な目になり、ユーザーの手元に届くまで時間がかかってしまうことが難点です。善意的な見方をすれば、それだけ職人さんが丁寧に作ってくれていて、ハイクオリティな製品作りにこだわっているメーカーだということで。
万一オーバートンが「自作自演の嘘」をついていたとしても、手元に届くまで待つ楽しみもあるとはいえないでしょうか。…いえないか。
オーバートンの方針がどうであれ、入荷まで何か別のことをやって、気を紛らわすのもいいかも。
日本人は、上記の海外のメーカーの方針は理解できないかもしれませんけど、それは、日本人がかつての好景気の影響で、「お金さえ出せば何でも手に入る」という単純な考えに染まっちゃってるからでしょうね。
どんなメーカーなのか
本拠地はU.K.
オーバートンのメーカーの本拠地はU.K.(United Kingdom)のようです。代表者は
の二人です。この二人が居なければ、現在のオーバートンのメーカーは無かったのです。
オーバートンのメーカーのサイトのURLは以下の通り。バーナード・オーバートン氏が亡くなってからはコーリン・ゴールディ氏が後を継いで、サイト名も「Overton whistles」から「Colin Goldie whistles」に変わりました。
大きな音符の画像が入り口です。メニューからも入れます。英語が苦手な人でも翻訳ソフトを使えば何とかなるでしょう。
オーバートンのメーカーのサイトを作っている人は、
です。
20世紀後半に、世に初めてテナー管が出てきました。それが、Mr. Bernard Overton の作った Overton Tenor whistle だったのです。そこからテナー管の歴史が始まりました。テナー管の輝かしい第一歩ですね。
それ以後、いろんなメーカーからテナー管が発売されるようになり、かなり演奏しやすい機種も出てきたようです。しかし、全管アルミニウムの削り出しという、当時としてはかなり斬新なアイディアを考えてテナー管を発明した人物は、Mr. Bernard Overton だけなのです。
現在メーカーでは、テナー管やソプラノ管以外にも、他の音域のモデルをたくさん作っているようで。
オーバートンは、一本一本職人さんが丁寧に作っているんですけど、それは昔も今も変わらないようです。一本一本の品質を落とさないために、大量生産に走ることなく、あえて時間と手間をかけて作っているようで、常にハイクオリティな製品が作られてます。根っからの職人気質でストイックなメーカーですね。
オーバートンは、決して世界的なシェアを誇っているわけではありませんし、世界的な人気というわけでもありません。オーバートンを吹いている奏者は、マニアックな奏者が多いようです。そしてそのマニアックな奏者からの根強い人気を、オーバートンは昔から持っているようです。そういうファンの応援を裏切らず、今もハンドメイドのポリシーを貫いてコツコツと生産しているようで、ティンホイッスル作りに対するこだわりと気概が感じられます。
ハンドメイドじゃなくて大量生産にすれば、市場に大量に出回ってユーザーの手元にもすぐ届くんでしょうけど、その分どうしても品質が低下するので、やはり今のハンドメイドのポリシーを今後も貫いていって、ハイクオリティなティンホイッスルを作り続けてほしいですね。ハンドメイドのポリシーを貫いている限り、オーバートンの人気は今後も衰えることは無いでしょう。
ところで、オーバートンではなく、他のメーカーさんで、お金儲けに目がくらんで大量生産に走った、「元ハンドメイドだった」愚かなメーカーさん達へ。オーバートンのかたくななポリシーを見習って、改心してくだされば幸いです。改心する気が無いのでしたら、「同じ名前で、別のメーカーになった」と捉えさせていただきますので、ご了承くださいますよう宜しくお願いいたします。なんちゃって〜(笑)。
関連するメーカー「Hardy」
この部分はオーバートンの直接的な話ではなく、単なる余談です。
Hardy(ハーディ)というメーカーのチーフテンという機種があるんですけど、全管アルミニウムなのはオーバートンと同じです。以前はオーバートンの製作ノウハウを元に作られていました。
Chieftain
Soprano D
しかし、現在のチーフテンは管体の太さがあまりにも太く、オーバートンの製作ノウハウを元に作ったとは言えなくなってしまったようです。
上がオーバートン、下がチーフテン
かつては、チーフテンはオーバートンの廉価版として考えられてきたようですけど、今では全くの別物になっています。くわえる部分の形も大きさもずいぶん違いますね。
太さの違いがよく解りますね。ベルの部分は、チーフテンは管体の切断面の処理がやや雑です。廉価版だからと言えばそれまでなんですけど。
オーバートンに比べると、チーフテンはトーンホールもだいぶ大きいので、指の細い人には辛いです。指の細い人は押さえ切れなくてミストーンが多くなるでしょうね。
管体やトーンホールだけならまだしも、チーフテンはウインドウェイもかなり広いので、演奏には本当に大量の息が必要です。桁外れな息の瞬発力や肺活量がないと演奏できないという、演奏者が限られてしまう困った機種なんですよ。
チーフテンを作っているHardyは、昔はオーバートンの関連メーカーという存在でしたけど、現在は全くの個別のメーカーとして独立しているようです。Hardyが独立した際には、いろいろとややこしい事情があったようで…。
Hardyがチーフテンという機種のモデルチェンジを行い、管体を太くしたのは、1999年の後半から2000年の前半だと思われます。私が買ったのは2000年の7月でしたけど、その時は太い管体へのモデルチェンジがされた直後だったようです。
「Hardyさーん、なんでこんなにチーフテンを太くしたの?」と思ったもんでしたけど、昔から作られていた機種でチューナブルモデルのほうは、元々管体が太かったようです。しかし(私が買った)1ピースモデルまでをも太くしてしまったのには、何か理由があるのかしら? と思いました。
推測ですが、チューナブルモデルと1ピースモデルを同じ太さにしたのは、製造コスト削減の可能性があるんじゃないかなと。その他にも推測できる理由があるんですが、勝手な推測に過ぎないのでこの辺でストップしておきます。
それにしても、かつての関連機種だったとはいえ、ここまで変わってしまったチーフテンには、もはや「オーバートン」という表現手段の言葉を使う資格さえないんじゃないでしょうか? だって、これじゃ全くの別物ですもん。
オーバートンを応援
うちは応援サイトでもある
「めあ4歳」は、オーバートンを応援するサイトでもあります。それでオーバートンのメニューを、他のティンホイッスルのメニューよりも大幅に増やして充実させて作った次第です。
私はホントにラッキーだと思っています。いろんな紆余曲折はありましたけど、最終的には、自分が最も好きになれるオーバートンに出会えたんですから。
念のために書いておくと、このサイトでオーバートンの応援をするにあたって、どこからも金品は受け取っておらず、援助も受けておらず、宣伝などのお願いも一切受けていません。要するに私が一人で勝手にオーバートンを応援しているだけです。
ただ、オーバートンのメーカーの人がネットで検索されて、偶然うちのサイトを発見されたようで、オーバートンのサイト製作者であるBrigitte Goldieさんと、オーバートンのメーカーの代表者であるColin Goldieさんから直接、励ましのメールをいただいたことはあります。それでも、金品は何も受け取っていませんし、宣伝のお願いなども一切受けていません。まぁ、こうして専用コーナーまで作ってて充分宣伝になってるから、これ以上の宣伝は必要ないと思われたのかもしれませんけど。
ご本人達からの直々のメールだったので驚いたけど、嬉しかったなー。返信の英文、ちゃんと伝わったかなー。ちょっと不安。
うちのサイトは、オーバートンのメーカー関連の人たちだけでなく、他の海外の人にも見ていただいているようなので、サイトに「This website is Japanese only.」なんていう訳の解らない英文を書いていなくてよかったです。だってこれじゃ、「日本人以外お断り」っていう差別用語にも取れるからです。実際こう書いてしまっている他の日本のサイトはかなり多いようですけど…。
あえて書くとしたら、「This website is written in only Japanese langage. I'm very sorry. I'm short of read in English.」という風にでもなるのかしら? これでも正しい英語ではないだろうし、長ったらしいし、どっちにしても面倒なので私は書かないし、正確に意味を伝える自信が無いのならば最初から英文の但し書きなんて書かないほうがよっぽどマシなので。
海外の閲覧者さん達、私は正しい英語を書けないので、翻訳ソフトをお使いください。
というわけで、うちはオーバートンを応援しています。オーバートンに興味を持った人は、ぜひ、
オーバートンのティンホイッスルを買いましょう!
オーバートンのティンホイッスルを吹きましょう!
オーバートンのティンホイッスルを楽しみましょう!
Let's buy the Overton tinwhistle!
Let's play the Overton tinwhistle!
Let's enjoy the Overton tinwhistle!
ギャラリー
改造(ウインドウェイ)
気難しい特性に苦しむ
私が愛用しているオーバートンのソプラノDは気難しい特性を持っていて、ウインドウェイのわずかな広さに対して非常に敏感に音が反応しちゃうんですよ。2オクターブ目のEの音がダブルトーンになって、気温の変化にも影響を受けやすいんです。
Overton
Soprano D
「オーバートンを吹くための独特のテクニック」というのが必要で、極端に繊細な息使いをしなければならないんです。綺麗な音やピッチの合った音を出そうとすると、かなりクセのある、気難しいティンホイッスルだということが解ります。
今までオーバートンのいいところばかりを書き連ねてきましたけど、このように、悪いところも少なからずあるんですよね。私は、ティンホイッスルのいいところばかりを紹介するのはつまんないと思うので、悪いところもどんどん書いちゃいます。
オーバートンの悪い特性を演奏テクニックでカバーできないかと思って、いろいろと練習してみたんですけど、基本的な特性は変わらず、気温の変化に極端に影響を受けやすいのも変わらなかったです。
そこで思い付いたのが、「ウインドウェイ内部をほんのわずか狭くしよう」ということです。
ビニローゼを試しても…
あのただでさえ狭いオーバートンのウインドウェイを更に狭くするには、どうしたらいいかを考えて、DIYセンターに行って、「ビニローゼ」という塗料を買ってきました。
このビニローゼ塗料を、細く切ったプラスティックの板に塗って、それをウインドウェイに通してウインドウェイ内部を塗装したんですけど、ビニール樹脂の塗料なので熱に弱く、夏場はだんだんと溶けてきて演奏に支障が出て、ダメでした。
そこで思い付いたのが、一体成型のアルミニウム管体とウインドウェイなので「アルミパテ」を使うということです。自動車のアルミホイール補修に最適、耐熱温度はなんと100度、老朽化の心配は無い、いいことずくめですね。
作業前のマスキング
作業を始める前に、アルミパテがくっつかないようにマウスピースの周りをマスキングしないと、ということで、プラモデル用のマスキングテープを張りました。
ウインドウェイ内部をサンドペーパーで磨いて綺麗にして、充分に乾燥させてからテープを張りました。そのほうが作業が楽なので。
アルミパテ作業開始
さて作業開始です。アルミパテと硬化剤を混ぜ合わせて、プラスティックの板になすり付けます。
これをウインドウェイ内部にズボッと通して、ウインドウェイ表面にアルミパテを塗ることによって狭くしました。
数秒待ってからプラスティックの板を引き抜いて、ウインドウェイ出口に付いたパテの残りを除去します。道具は折った紙を使いましたけど、別になんでもオッケーです。
忘れるとまずいのは、アルミパテが乾いたあと、ウインドウェイ横側に付着したアルミパテを全て削ぎ落とす作業です。こうしないとウインドウェイに溜まった水分が管体へとうまく流れていってくれないので。
作業完了
最後に目の細かいサンドペーパーで、できるだけ正確にウインドウェイの形状が整うように、慎重に少しずつ磨きながら微調整をして完了です。仕上げるまでに相当な労力を費やしたんですけど、それでもかなり楽しい作業だったので、よしとしますか。
実際の狭さ
私がウインドウェイの掃除のために使っている道具で、レンタルCDショップの使い古した会員カードを切ったものがあるんですけど、このカードの厚さは1ミリ弱くらいです。
このカードをオーバートンのウインドウェイに差し込んでみると…
ウインドウェイの出口からエッジにかけての中間部分までカードの先端が出てきました。でもこれ以上は入っていかないんですよ。それくらいギチギチで、抜く時はちょっとチカラが必要なほどです。この狭さは凄いかも。
シェイクダウンテスト
さて、緊張のシェイクダウンテストですけど、解ったのは、かなり演奏性がアップしたことです。
・今までの問題だった2オクターブ目のEが、綺麗に出るようになった。
・音色が気温の変化に影響されなくなった。
・ダブルトーンになったり音自体が出なくなる、というやっかいな特性が消えた。
・息の消費量がかなり少なくて済むようになったので、ロングトーンが楽になった。
・全体の音量が小さくなったので、室内での演奏でも音量を気にしなくていい。
・元々全体的にやや高めだったピッチが、全体的にほぼ標準のピッチ(A=440Hz)にまで下がった。
・吹き込む息に対しての抵抗感が以前よりも更に強くなり、ビブラートなどの表現を付けやすくなった。
悪くなったところを強いて挙げるならば
・音量が大きい楽器とのセッションでは、オーバートンの音量が小さいので音が目立たない。
こんなところですね。
息の瞬発力が更に必要
ノーマルでさえ吹き込む息に対しての抵抗感があるのに、今回の作業でその抵抗感が更に強くなり、高音域では息の瞬発力が更に必要になりました。これは新たな「オーバートンを吹くための独特のテクニック」といえるでしょうね。人によってはものすごく吹きにくい笛だと感じるかもしれませんけど、私には合っているようで、とても吹きやすいです。
哀愁溢れる音色
ノーマルのオーバートンは、「しとやかな女性が声を枯らして泣いている」ような音色なんですけど、今回の作業によって、「きゃしゃで小柄な女性が声を殺してすすり泣いている」という感じの音色になりました。かなり哀愁を帯びてて、むちゃくちゃ気に入ってます。
えっと、最後にご注意を。今回紹介した作業は、金属用パテ成型に慣れていないと失敗する危険性が大きいです。もしご自分で作業してみようという人がいらしたら、あくまで自己責任において、かつ慎重に作業してください。
改造(マウスピース)
更に自分好みにするために
さてさて、このオーバートンをまたいじっちゃえ〜、という試みです。
Overton
Soprano D
今回の作業は、「外見を更に自分好みにしよう」と思って考えたもので、マウスピースの角を削る作業です。
このマウスピース部分を削る
「なんて勿体無いことをー!」と思われるかもしれませんけど、他のページにも書いたとおり、オーバートンのソプラノDをスペアとしてもう1本持ってるんです。実践用とスペアで、全く同じ機種を2本持ってるんですよ。ですので万一失敗しても安心なのです。
上がスペア、下が実践用
上がスペア、下が実践用
考えたくはないんですけど、実践用が万一、何かのトラブルで壊れて使い物にならなくなった時に、すぐにまた吹けるようにスペアを持っているというワケです。オーバートンは注文してもすぐには手に入らないティンホイッスルなので、あらかじめスペアを買っておいた、というワケなんです。まぁ、このスペアの出番がこないことを願っていますけど、いろんな場所で吹いていると、どんなトラブルがあるか解りませんから。
「そんなに貴重なティンホイッスルなら、最初から危険な改造なんてするなよ!」と思われるかもしれませんけど、やりたいんだから仕方がありません。この我侭で自分勝手な衝動は誰にも止められません。
閑話休題。さて、今回の改造作業も当然、実践用のほうをいじります。
用意する道具は、粗目の平ヤスリと、細かい目の平ヤスリ、細かい目のサンドペーパーです。
えっと、実は作業風景の写真を取る暇もなく、黙々とやってる内に完成しちゃいました。いや〜、すっごく根気が要るし神経を使う作業だったので、つい熱中しちゃって。
なので、マウスピースを加工して仕上がった改造版とノーマルを並べて、どういう風に違うのかを写真で紹介します。
まずは単体で紹介
まずは単体で改造版です。こういう風に削ったのでした。
改造版をベル側から見た写真です。写真では解りにくいですけど、マウスピースの角っこが管体よりも出っ張らないように仕上げました。
要するに、「ストレートな管体から、何も出っ張りを出したくないので、マウスピースの出っ張った部分を削ろう」と気持ちから今回の作業を思い立ったのでした。くっだらない改造理由でしょ。私ってこういう無意味でくだらない改造で遊ぶのも、大好きなんです。
更に細くなった
今回の作業で出来上がった改造版は、ノーマルよりもかなり内側にラインが入ってます。その分、マウスピースが細くなってます。
下が改造版
左が改造版
手前が改造版
手前が改造版
手前が改造版
右が改造版
ただでさえ細いマウスピースを更に細くしたのは、当初の目的通りですけど、削る度合いを判断するのにずいぶん神経を使いました。端から見れば、ばからしい労力の浪費ですね。でも私は、楽器についてはとことん形にこだわる性格なのです。この非常識な価値観はたぶん永久に治せないだろうなぁ。
ウインドウェイの肉厚
削った分ウインドウェイの肉厚が薄くなって、強度が落ちてるのは間違いないんですけど、実用に影響が無いと思った範囲で削りました。
右が改造版
右が改造版
下が改造版
左が改造版
下が改造版
マウスピースの裏側は、どこも削っていません。これはついでに撮影しただけなので。
下が改造版
今回の作業の目的は、「見た目のカッコよさを、より自分好みにする」だけなので、演奏性は変わっていません。
改造(トーンホール)
トーンホールを拡大する改造作業
私の持ってるオーバートンは、たとえノーマルであっても、G・A・B・C#のピッチが低めなんですよ。改造版だったら尚更で、更にその4つの音のピッチが低くなります。Gはそれほどでもないんですけど、C#に向かっていくにつれて少しずつピッチが下がってきます。吹き方を一時的に変えるなどして試行錯誤してみたんですけど、これはどんなに息のコントロールをしても補えるものではないと判断しました。ウインドウェイを改造した改造版でのC#のピッチなんて、ヒドイ時には10Hzくらい下がっちゃうんです。こりゃ気持ち悪〜い。
そこで、G・A・B・C#のピッチを標準ピッチにまで上げるために、各トーンホールを削って拡大してみようという試みです。G・A・B・C#のピッチをいじるということは、F#・G・A・Bのトーンホールを削って大きくすることになります。
加えて、トーンホールごとのピッチバランスを可能な限り平均律に近づけてみようというのも目標です。
今回改造するのは、また例によって改造版のほうです。この際だから徹底的にいじり倒しちゃえ〜。
作業開始
まず、細めの丸ヤスリを用意します。丸いトーンホールを削るワケですからヤスリも丸いほうが断然やりやすいですよね。
ここでの最重要項目は、必ず下の(低い音の)トーンホールから削ることです。なぜかというと、低い音から作業を始めることによって、音程が積算されて高いトーンホールに影響を及ぼすからです。トーンホールの大きさによるピッチは低い音から順番に積算されるために、低い音から始めないと、高い音での正確性が無くなってしまうので。音程が積算されるっていうのは、私の「たぶんそうなんじゃないかな?」という考えに過ぎませんけど、とにかく低い音からやっていったほうがやりやすいと思います。
さて作業開始。まずF#のトーンホールを慎重に削りながら、その都度ロングトーンで吹いて、チューニングメーターでピッチの確認をして、ピッチが低いようであればまたトーンホールを僅かに削り、これを繰り返してピッチを正しい位置まで上げます。次に同じ作業要領でGのトーンホールを削る、そしてAのトーンホール、Bのトーンホールと順番に上がっていって、最終的に全体の、トーンホールごとのピッチバランスを安定させるワケです。
ヤスリで削る時に注意したほうがいのは、管体の中に折りたたんだ紙を突っ込んでおくことです。でも別に紙じゃなくてもいいです。要するに、ヤスリで削ってる時にヤスリの先端部分で管体内部を傷つけないようにすればいいです。それから、うっかり手が滑ってヤスリで管体表面にもキズをつけないようにしたほうがいいでしょう。表面ならキズがついても気にしないという人はいいですけど。
ノーマルとのトーンホールの比較
「んー、大体こんなもんかなぁ?」とナットクできたので、作業を終えることにしました。では、ノーマルと改造版を比べて、実際にどれだけトーンホールが大きくなったか、並べてみましょう。
上がノーマル。下が改造版。
結構F#・G・A・Bのトーンホールが大きくなったでしょ。いや〜この作業には何時間もかかって、かなり根気が要りました。正確さを出すために、どのトーンホールも慎重にビクビクしながら作業しましたから。
シェイクダウンテスト
さて緊張のシェイクダウンテストです。実際にロングトーンと演奏をやってみたんですけど、見事にG・A・B・C#のピッチがほぼ修正されました! チューニングメーターで確認しても殆ど狂いは無いです! いかんせんキーメカニズムの付いてない笛ですから完全に平均律に合わせることは無理ですけど、可能な限り平均律に近づけることができました。大成功〜。
って、ピッチ確認しながら作業したんだからシェイクダウンテストの必要なんてないか。あはは。
あとがき
作業してみたいと思った人へ。この改造作業は、あくまでも自己責任でやってください。入手に苦労する貴重なオーバートンを改造するだなんて、そういう勿体無い作業をやる人が居るかどうか解りませんけど。
この作業をやってみて思ったんですけど、私が買った当時のオーバートンのソプラノDっていうのは、トーンホールごとのピッチバランスがホントに悪かったんだなぁと(最近のオーバートンはだいぶ改善されてるみたいですけど)。更にウインドウェイを改造したらピッチバランスの悪さがもっと顕著に出てしまったんですよ。私はティンホイッスル製作の専門家じゃないので、なんで顕著に出てしまったのかは全然解らないですけど、顕著になっちゃって「もうガマンできなーい」と思って今回の作業をすることに決めたのでした。
しかし本来、ティンホイッスルっていうのは、ここまで正確なピッチバランスを求める笛ではないらしいです。特にアイルランド伝統音楽においては、少々トーンホールごとのピッチバランスが悪くても気にしないで吹く人が多いらしいです。ピッチバランスよりも音楽全体の雰囲気や味を楽しむことが優先なんだそうです。ティンホイッスルのアイルランド伝統音楽でのアプローチについては、ヘルガさんのサイトに詳しく書いてあります。とても参考になるサイトなので、ぜひご覧ください。こちら。
Tin whistle & Penny whistle
(誠に残念ながら現在休止中)
逆に言えば、ティンホイッスルに対してここまでピッチバランスを求める私は、一般のプレイヤーさん達から見れば異常に見えるかもしれません。あはは。でも現代音楽をティンホイッスルで吹こうとする場合は、どうしてもピッチバランスが合っていないと私はイヤなんですよ。
実はですね、「トーンホールを削る」という作業は、管楽器の世界では「やってはイケナイこと」らしいんですけど、私はやっちゃいましたよ。結果的によくなったんだから、まぁいいんじゃないかなと。