◇解説 ウォルトン ギネス◇


レビューは、あくまで個人的な感想に過ぎません。初めに必ずこちらをご覧ください。

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大きい写真はこちら (横幅550ピクセルの写真です)

マウスピースが白い泡、管体が黒いビール。ギネスビールをモチーフにしたらしいです。


Walton's Guinness Soprano D

管体の黒は艶消し塗装です。これ渋くて好きだったりします。

写真で見ると純白に見えますけど、現物はややクリーム色です。

ウインドウェイは、かなり広いです。なので多めの息が必要なんですよね。

ウインドウェイ出口もやはり広く、息に対する反応はイマイチです。

ウインドウェイ出口の成型は雑でバリが多いため、演奏に支障が出ることもあります。

写真からは解りませんが、マウスピース上部の表面はやや歪んでます。これも改善してほしいところ。

管体の塗装の質は高く、長年使っててもトーンホール周辺は変色しません。この塗装は素晴らしいです。金属製の管体の宿命である変色は、このギネスに限っては無縁です。管体の変色を気にする人にはギネスがお奨めですよー。


特徴

ウォルトンのギネスは、音色は言葉ではうまく表現できないんですけど、音に厚みがない、軽快な印象です。金属的な鳴りはほとんどなく、全体的に薄くて甘いカンジの音色です。とりわけ音の薄さが際立つもので、ギネス独特の音色でもあり、ユニークで個性的です。あえて言葉で表現するなら、「ピーーー」というより、やや空気の音が混じった「シュピー」という音色かな。そのために独特の表現もできて便利です。

マウスピースをお湯で温めて外してチューニングできるかのように見えるんですけど、実際は、お湯で温めてもマウスピースは外れないので、チューニングはできないです。私が持っているギネスのマウスピースは、外れない仕様です。その証拠写真を見せろとか言われても、マウスピースが外れない(付いている)状態の写真では解らないでしょうし。

※ 「ギネスのマウスピースはお湯に浸けなくても簡単に外れる」という情報があるようで、その人がお持ちになっている数本のギネスは全て簡単に外れるそうです。製造時期による仕様変更のために、マウスピースが外れる仕様になっていたものを買われたんですね。

マウスピース付近の管体をライターであぶって、中の糊を割ってマウスピースを外すという、かなり危険なウラ技を使えば、チューニングができます。このページの下のほうで「チューニングのウラ技」として紹介しているので、宜しければどうぞ。

ただし、時間をかけてチューニングしても、いくら繊細な息使いを駆使しても、トーンホールごとのピッチはバラバラで、合わないんですよ。トーンホールごとのピッチが一番合ってる所を探して、あとは妥協するしかないと思います。

状態のいい(金型が劣化していない状態で作られた)ギネスは、とても吹きやすく、名器です。きっちりした成型のマウスピースならば、かなり性能のいい、吹きやすいティンホイッスルでしょう。

最近はウォルトン全体の品質が落ちてきていて、どのモデルも演奏にかなりの支障が出るんですけど、ギネスだけはそこまでひどくはないようです。ただ最近のギネスは、プラスティック成型のバリがウインドウェイ出口付近に残っているため、高音部で若干の音割れがします。バリのせいでウインドウェイ出口の寸法が狂ってるんですよね。

ね? ずいぶん寸法が狂ってるでしょ。こんなウインドウェイ出口じゃ綺麗な音は出ません。このため最近のギネスは、ハイエンド付近では息をかなり強く吹き込まないと、ちゃんとした音が出ないんです。それくらい、私の持っているギネスは吹きにくいですね。なぜ息を強く吹き込まなければ音割れするのか、というと、ウインドウェイ出口のバリが空気の流れを乱して、エッジに綺麗な流れの空気が当たらないためです。それで強く吹いて無理矢理エッジに空気を叩き付けるようにしないと、ガラガラと音割れするんですよ。下にある「演奏性アップの改良作業」の項目で、ウインドウェイのバリを落として演奏性をアップさせる方法を紹介してるので、そちらもどうぞ。

マウスピースがプラスティックなんですけど、ただ作りやすいからプラスティックにしただけで、それ以外には特に理由は無いようです。要するに、マウスピースを白にしてギネスビールの泡をイメージさせることが最大の理由でしょうね。ギネスの存在価値って、そんなもんなのかなぁ?

管体は薄いアルミニウムで、ものすごく軽いです。もともとは超軽量なティンホイッスルを作る目的だったのではないかと。軽くて、持つのには楽なんですけど、あとはこれといった長所は無く、むしろ弱い管体のために取り扱いに気を遣う、気軽にバッグに無造作には放り込めないという、精神的に疲れるティンホイッスルですね。ハードケースとまではいかないまでも、何かの厚めの袋などに入れてある程度保護してあげれば大丈夫でしょう。

気候条件、特に風の強い時には、音が出にくくなります。出にくくなるというよりは、音の通りが悪くなるといったほうが正確でしょうか。風の強い時には、エッジに風が当たって、息の流れを乱してしまうんですよ。スタンダードやメロウに比べると、風による影響は、ギネスだとかなり受けます。荷重がかかってないような、音に重厚さがないためでしょうね。ほら、よくテニスのスマッシュなどで、ボールに荷重がかかってないスマッシュは、球質が軽いので相手に跳ね返されやすい。それに対してボールに荷重のかかったスマッシュは、球質が重いので跳ね返されにくい。あれと同じようなカンジだと思います。

気温の変化によるピッチへの影響は、ほとんど受けません。これはマウスピースがプラスティックのおかげだと思います。更に管体が薄いアルミニウムのために、気温の影響を受けにくいので、ピッチが変わってしまうことが殆ど無いからだと思います。ピッチへの影響を殆ど受けないという点では、ギネスはかなり性能がいいです。

工場出荷状態でのピッチは、やや高め。A=443Hzくらい。ウォルトンの悪いところの一つとして、製造の時に、ギネスの管体に強い接着剤を塗って、マウスピースを適当にブスッと突っ込んで、そのまま出荷しちゃってることです。なので、一本一本のピッチにかなりのバラつきがあります。おまけにお湯で温める方法のチューニングができないし。たまたま、私が持ってるギネスのピッチはやや高めですけど、他の人のギネスのピッチは高かったり低かったりで、工場出荷状態で丁度A=440Hzに合ったギネスは、なかなか無いようです。

ギネスのメリット。音量はそれほど大きくなく、室内での練習には最適です。全体の軽さは、他のティンホイッスルと比べてすごく軽いので何かと便利でしょう。そして最大のメリットですけど、管体は艶消し黒の塗装がされていて、これがすごくいい塗装で、長く使っていてもトーンホール周辺に指の跡が付かない・変色しないんですよ。この塗装の質は素晴らしいです。ウォルトンを買おうと思ってる人で、トーンホール周辺の変色を気にする人には、ギネスがお奨めですよー。買ってからウインドウェイのバリを落とす必要がありますけど、大した作業じゃありませんから。

デメリット。管体が薄くて弱いので、ちょっとでも無理なチカラをかけると、もれなくグニャリと変形するか、運が悪いと割れてしまいます。かなり薄いアルミニウム管体ですからヤワです。軽さが欠点にもなっちゃってるので、取り扱いに気を遣います。で、とにかく「風に弱い」ということです。屋外で吹いててちょっとでも風が吹くと、音がすごく出にくくなっちゃうんですよね。これは大きなデメリット。風に弱い原因は、ギネスの個性である薄くて軽い音色にあります。音に重厚さが無いのが魅力なんですけど、それが逆にアダとなって、風を押し切って音を出すことが苦手なティンホイッスルなんですよ。あと、これはどうでもいいことですけど、マウスピースを適当に差し込んで固定しちゃってるので、マウスピースとトーンホールの円周上での位置関係が真っ直ぐではなく、吹き口から見るとトーンホールが右回りか左回りにズレていたりします。どうもそういうギネスが多いようです。


私のギネスは、マウスピースが右回りにズレてる

そして最大のデメリットは、いくらがんばってチューニングしても、トーンホールごとのピッチがバラバラだということです。これは笛としては致命傷で、演奏者の技量でまかなえる範囲を超えています。私のギネスは2001年の春頃のモデルなので、現在では改良されてるかもしれませんけど、相変わらずダメなままかもしれません。

購入する時の注意点は、品質は決してアテにならない、ということです。とびきり優れた・吹きやすい・マウスピース取り付けのズレなども無い、そういうギネスも中にはあるでしょうけど、殆どのギネスには、そこまでの精度は望めないようです。大抵、バリが出ていたり成型が歪んでいたりします。自分でいろいろいじって改良する、という前提で買うならば面白いでしょう。それから、たまに、出荷した時のパッケージが潰れてることもあります。メーカー側で潰れたものもあれば、搬送中に潰れたものもあるでしょう。どちらの場合でも、管体の変形が無いか確認したほうがいいです。薄いアルミニウムの管体のため、ちょっとでも無理なチカラがかかったら変形しちゃうので。お店で買う時には、パッケージの潰れが無いかをよく見ましょう。


メーカーについて

同じウォルトンのティンホイッスルでも、「ギネス」というアルミニウム管体の機種の製造だけは頑張っているようです。メーカー側としても、極薄なアルミニウム管体というのを斬新なアイディアとして、製造にチカラを入れているんでしょうね。極薄な管体の音色の魅力もさることながら、ものすごく軽くて、長い間使っていてもトーンホールの周辺が変色しないので、そういう点でもかなりのファンを得ていますし。品質がこれ以上落ちるのは避けてほしいです。ギネスはせっかく個性的な作りの機種なのに、品質が落ちちゃったら勿体無いので。

ウォルトンのサイトはこちらです。

http://www.waltonsmusic.com/


チューニングのウラ技

お湯で温める方法でもマウスピースが外れない時、その時はどうやってマウスピースを外すのかを紹介します。

ライターで管体をあぶって、マウスピースを外す作業です。ライターは100円ライターで充分です。

この作業は、ひとつ間違えばマウスピースを溶かしてダメにしてしまう危険なウラ技なので、作業要領をよく読んでから作業してください。

ライターであぶる作業は、マウスピース自体をあぶったらマウスピースが溶けちゃうので、重要なのは、「あぶる位置を管体のみにする」ことと、「あぶる時間を短時間にして、何回かに分ける」ことです。

管体が熱くなるので、管体を持つほうの手には、何かしらの手袋をはめたほうがいいでしょう。

あぶる位置と管体からの距離は、写真の通りです。


あぶる位置と距離はこれくらいで

これで、あぶりながら管体を回します。管体のラベルがコゲないように、素早く回したほうがいいです。


管体をクルクルっと


ラベルがコゲないように注意

管体を2〜3回ほど回転させてあぶったらひとまずヤメて、管体が完全に冷えたら再度同じあぶり方をする、これを何度か繰り返します。

あぶるのは、これで終わりです。管体とマウスピースを握って、軽く雑巾を絞る要領で、ねじりながら回します。


やれやれ、やっと外れた〜。

ライターであぶる作業を繰り返すのは2〜3回でいいと思いますけど、2〜3回やってもマウスピースが外れない時は、また同じ作業を繰り返してください。

それから、マウスピースの固着を防ぐ方法を紹介します。

ギネスのマウスピースは、一度は外れても、差し込んでしばらく使ってると、また差し込み部分が固着してくるので、固着を防止するために管体の差し込み部分をサンドペーパーでジョリジョリ削って、黒い塗装を綺麗に剥がしておきます。


このくらいの範囲を削る


これでまた差し込む

うっかり削りすぎて差し込み部分がユルユル気味になったら、クラシックの管楽器を扱ってる楽器屋さんで、ピッコロなどのジョイントに塗るコルクグリスを買ってきて、差し込み部分に厚めに塗ればいいですよ。ユルすぎず固すぎずの丁度いい抵抗になります。


演奏性アップの改良作業

ギネスは、高音部で息を強く吹き込まないと音割れする傾向があるんですよね。

原因は、ウインドウェイの出口に残ってる、プラスティック成型のバリのせいのようです。

バリが原因で、息の流れが乱れて綺麗にエッジまで届かないので、音割れしてしまうようです。

ウインドウェイ出口の上側に見事にバリが残って、本来は長方形の穴なのに、まーるくなっちゃってます。

また、向かって右の出口ですけど、下側の寸法が狂ってますね。プラスティック成型の品質がかなり悪いです。では早速、改良してみましょう。

用意する道具は、ウォルトンのスタンダードの時に使ったヤスリで充分ですし、横側にギザギザが付いてなくても大丈夫です。

黒い取っ手のがダイヤモンド混合金属のヤスリ、緑の取っ手のが、よくある鉄ヤスリです。

ウインドウェイにヤスリを入れて、突つくようにして出口のバリをかき出します。

取りあえずバリが全部折れてくれたら、一旦ヤスリを抜きます。

折れて出てきたバリを除去するために、ウインドウェイ出口側からこさぐようにして、バリのかけらを取ります。

この時、ヤスリがエッジに触らないように注意してください。

これで改良作業は完了です。作業後吹いてみたら、普通の息使いでも高音部で音割れはしなくなりました。大成功〜。

 

現在ではウォルトンは品質がかなり改善されたようで、メロウD2015年モデルのページでフォローしています。


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