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いろんなアングルの写真
Adler
Classic Soprano D
リコーダーを作っているメーカーだけに、形もリコーダーみたいですね。
中央に見える黒いものは、ジョイント外部にはめられたリングですけど、材質はシリコンかしら? なんでしょう? ゴムではないようですけど。
アドラー・ハインリッヒというメーカーのウッド・ティンホイッスルであるロゴが刻まれています。
写真が悪いですけど、Made in Germanyと書かれています。「Made in 〜」といえば、昔は、日本製を現す「Made in Japan」は一つのステータスシンボルになっていましたけど、今では何の価値もないですね。Made in Germany や Made in Englandのほうが、商品としてよっぽど信頼できそう。
ウインドウェイ下部に差し込まれている棒は、色が違うんですよ。ここだけ別の木のようです。木は水分を吸って膨張するので、膨張率の低い木なのかな?
ウインドウェイ出口はちょっとエッジとの角度が狂っています。やっぱり大量生産だと仕上がりが雑になるようで。
BのトーンホールはAよりも大きくて、こういう作りは珍しいかも。これより以前のモデルは、Bのトーンホールが小さめでしたけど、アドラー特有のCの運指を嫌がるユーザーが増えて、改良を試みたのかも。
特徴
アドラーは、ドイツのリコーダーのメーカーが作っているティンホイッスルで、リコーダーのノウハウを元に製作されているようです。音色はウッド特有の篭ったような音色です。音量はけっこう大きく、スザートの音量と同じくらいです。けっこうやかましいですね。
ジョイント部分を動かして、チューニングができます。
このジョイントを動かすと
こうなる
黒いリングはただの飾りなので、取っちゃってもいいですね。見た目がかっこ悪くなるってだけのことですから。演奏する上では、リングはあっても無くても同じです。あっても、チューニングの位置の目安くらいにしかならないでしょうね。
これ以前のモデルでは演奏でCの運指を工夫する必要があったんですけど、このモデルはそれほど気にしなくてもいいみたいで、通常のCの運指でも大体ピッチが合っています。あくまで大体ですけど。
いきなり高音部を綺麗に出すことは難しくて、しばらく吹いてウインドウェイや管体の内部が湿ってきたら、ようやく高音部が綺麗に出てくれる、そんな性質のようです。しばらく吹き込んだ状態でも、高音部で正確なピッチを保つには、けっこう息量が必要です。スザートの高音部よりキツイかも。
材質は、メイプルという木です。カエデですね。木の中ではけっこう丈夫で、ある程度の水分にならば耐えられるようで。木の目が細かいので流線形に加工しても表面が荒れず、綺麗な仕上がりになるようで。まぁ、表面処理の技術もあるんでしょうけど、楽器の材質としてはいい木だと思います。また、メイプルのためか、ウッドのティンホイッスルにしてはだいぶ軽いです。プラスティックのリコーダーと同じくらいの軽さだと思います。
ウインドウェイの下部にはメイプルとは違う材質の木がはめ込まれているようです。この材質は何なのかちょっと解らないんですけど、メイプルより膨張率の低い木なんじゃないかしら? と思います。膨張率の低い木をウインドウェイ内部に使って管体の割れを防いでいるということで。それでも、吹き倒して無造作に放っておくと、ウインドウェイが水分を吸い込んでヒビが入ったり割れたりすることもあるので、吹き終わった後はウインドウェイの水分を除去しなきゃならないという、管理に気を遣うティンホイッスルです。木の材質を変えて割れを防いでも限界があるようで。
アドラーは、夏場の屋外で吹いたりして管体が暖まって、ケースとかに入れない状態でいきなり冷房のきいた部屋に入ったりすると、かなりヤバいです。急激な温度変化はウッド楽器の寿命を一気に縮めてしまいます。まぁ、温度変化に弱いのはどんな木でも同じですけど、ティンホイッスルは薄い木ですからね。クラシックの管楽器ほどには神経質にならなくてもいいですけど、やはり温度変化には弱いです。
冬場の屋外で吹いて、そのまま今度は暖房のきいた部屋に入ったりすると、これはもっとヤバいです。吹いた時の水分が管体に付いていて、それが膨張して管体に無理なチカラがかかります。見た目は解らなくても、かなり無理なチカラがかかっているはずです。そのために、最悪の場合は管体が割れることもあるんですよ。木は膨張もありますけど縮小もありますし。冬場の水分の手入れは欠かさずやったほうがいいですね。
アドラーの管体を温度変化から守るために、買った時に付いてくるカバーにいつも入れていたほうがいいと思います。
こういうカバーが付いてくる
特に冬場は、吹き終わって管体の水分を除去したら、カバーに入れて、温度変化から守りましょう。
アドラーの工場出荷状態のピッチは、ほんの僅かに低めです。A=438Hzくらい。各トーンホールのピッチがいちばん安定する状態でチューナブルスライドを動かすと、そこら辺のピッチのようです。「高いんじゃなくて低いの?」と思うんですけど、新品の状態では低めのようです。で、使ってる内に管体の内側に様々な微粒子がこびりついて管体の内径が小さくなっていって、だんだんピッチが上がってくると考えられるんですよ。もちろんそんな内径の違いなんて、肉眼では解らないんですけど。
付属品で、管体内部を掃除できるプラスティックの棒があります。ピッコロの管体内部の掃除に使うのと同じようなものです。
こんなの
これにガーゼを巻き付けて管体内部を掃除します。
水分は吸い取れても、うっすらとこびりついた微粒子までは取れないようです。それで内径が僅かに狭くなったまま・ピッチは僅かに高いまま、というワケで。ちなみに微粒子は、ある程度表面にこびりついたら細かい木の目を塞ぐので、それ以上はこびりつかないはずですけど、これはしばらくの期間吹き倒して確認してみるとしますか。
アドラーのメリット。ウッド特有の、篭ったながらも温かい音色が味で、この音色はウッドならではの強み。音量が大きくても、キーンと響くような音ではないので耳障りにはならない。ウッドのティンホイッスルとしてはとても軽くて、しかも丈夫。ウッド製にしては比較的安く、ウッド製の廉価版と考えていい。ウッドのタイプを初めて買う人には、気軽に買える廉価版のアドラーがいいかも。これも立派なメリット。
デメリット。吹いた後の水分の除去や温度変化への対応など、とにかく管理に気を遣う。管理を怠ると管体が割れることがある。長年使っているとジョイントが擦り減って緩くなる可能性がある。ただしこれはジョイントにクラシック楽器のピッコロなどに使うコルクグリス(アドラーの材質は木なのでコルクグリスを塗っても大丈夫です)を塗ることで解消できる。それからなんといっても、通常のCの運指では正しいピッチのCの音を出せないので、専用の運指を使わなければならない。これはけっこうめんどくさいので、デメリットに入れときます。
買う時の注意点ですけど、モデルチェンジによって、新しいモデルは、Bのトーンホールが大き目になりました。私が持ってるのはこの新しいモデルなんですけど、新しいモデルは古いモデルよりも全体的なピッチバランスが安定して、改良されているようです。海外の販売代行業者さんなどにうかつに注文すると、在庫に残っている古いモデル(ピッチバランスの悪いモデル)が届く場合もあるかもしれませんので、そういう所で買う時は、置いてあるのが最新モデルなのかどうかを確認しましょう。同じアドラーのティンホイッスルでも、製造した時期によって材質が微妙に違うようで、混じりけの無い完全なメイプルだったり、樹脂を僅かに含んでいたりするようです。材質の細かいことを問い合わせるのは難しいでしょうし、相手も解らないかもですけど、買う時に確認できればそれに越したことはないですね。とか言いつつ、私はめんどくさくて確認しませんでしたけど(笑)。
メーカーについて
アドラーは長年に渡ってリコーダーをハンドメイドで作っているようです。いわばスウィートハートみたいなメーカーで、値段はスウィートハートに比べれば遥かに安いんですけど、なかなかの仕上がりです。
本来はリコーダーをメインに作っているメーカーなので、ティンホイッスルのラインナップは少ないです。確認できたところでは、2種類しかなくて、寂しいような気もします。とにかく、手軽な廉価版のウッドのティンホイッスルを今後も作っていって欲しいものです。
アドラーのサイトはこちら。
http://www.adler-heinrich.de/
(現在リンク切れ)