◇アルバムの感想 水心◇


春の土 (作曲:宗次郎)

だんだん温かくなってきて、すっかり春。こんな時には温かい土に触れてみたい。そんな気持ちにさせてくれる曲です。

宗次郎は、全国各地の土を捜し歩いて、自分が作るオカリナの材料となる土を見つけたそうです。どこの土だったかは不覚にも忘れてしまいましたけど。

そういう努力が実って今の宗次郎のオカリナがあるんですよね。春の土からはそんなことも感じ取れます。


水の旅人 (作曲:宗次郎)

水の旅人でイメージするのが川なんですけど、宗次郎は何をイメージして作ったんでしょうね?

上流から流れてくる川は、まだけっこう勢いがあって、下流に行くにしたがって勢いが弱くなる。次第に海へと近づき旅も終わりに近づく、なんちゃって。

川の水がだんだんと下流に近づいていくのを見守るしかなくて、下流では時々ゴミが浮かんでたりして興ざめします。ま、仕方ないか。

川が汚れていくのも水の旅人の宿命なんだ、という雰囲気を感じました。


悲しい水 (作曲:宗次郎)

イントロはアコースティック・ギターの悲しげな、ゆっくりしたテンポのフレーズです。オカリナはかなり高い音域のを使ってるようで。

溜まったまま流れていかない水っていうのはどこにでもあるもので、それを題材にした気がします。

吹き溜まりにとどまって、そのままどこへも流れて行くことができず、忘れられた存在になっていく、そういう水の泣き声を高い音域のオカリナで表現したんじゃないかなと。

「悲しい水」というタイトルの通りで、始めから終わりまで悲しいフレーズが延々と続きます。水の泣き声を表現したのはすごい。


静なる湿原 (作曲:宗次郎)

イントロのストリングスから、もう幻想的です。オカリナは中盤部分は割と静かに進んでいくんですけど、終盤ではトリルを駆使して盛り上げています。

2番以降ではオクターブ違いのオカリナに持ち替えているようで、よく使われる方法ですね。

きいた話では、この曲は北海道の釧路にある湿原を題材にしたらしいです。何かのテレビ番組で大きく取り上げられた筈ですけど…、いえいえ、写真の湿原は違いますよ。イメージとして見てください。

いくらなんでもこのためだけに釧路まで行く気にはならないし、そんな時間もなかなか取れません。


水心 (作曲:宗次郎)

水心の読みは「すいしん」です。「みずごころ」ではありません。まぁ、水が持つ心と解釈すればいいんでしょうけど、魚心あれば水心…の例えになるとイヤだなぁ。

全部オカリナソロで、バックは一切無し。テンポは殆どフリーテンポ。澄んだ綺麗な水をイメージしたのではないかなと。

水は砂の形を美しくするチカラがありますね。水が作った砂模様はとっても綺麗。海底の綺麗な模様をテレビとかで見たことはありますけど、あれと同じ作用かしら?

こういう綺麗な模様を作る水は心を持っている、ということを表現した曲だと思います。


生きている水 (作曲:宗次郎)

3度奏法自体は宗次郎はしょっちゅう使ってて、彼の奏法の定番にもなってるんですけど、その中で特に印象に残るのがこの曲。3度違いの平行調をうまく繰り返して、水の流れを表現してます。

実際に聴くと、生きている水を表現できていることが解るでしょう。おおげさかな?

曲は宗次郎らしくシンプルな構成なんですけど、そのシンプルな音の中でここまで表現できてしまうのは、脱帽するのみ。

音域は低めを使い、静かな印象です。水って不思議だけど、宗次郎の音楽も不思議だなぁ。


雪どけの里 (作曲:宗次郎)

春になっても山にはまだ雪がけっこう残ってて、日差しが当たらないから溶けなくて、歩くのは怖い。でもこの雪が溶ける頃には、故郷もだいぶ温かくなってるかな?

などという風に、春の到来を喜ぶ曲みたいです。

凍った雪が溶けると、新しくできた水になって故郷にも新しい水が流れる、そんな思いをつづったカンジです。

6連譜とメジャーなメロディで、実に軽快に作られてます。聴いてて楽しいです。


海にゆられて (作曲:宗次郎)

川から海へと流れ込んだ水は、それはもう海の一部になってゆらゆらと漂う。一連の曲たちを順番に聴いてると、水が上流から下流へ、そして最後は海へと流れ込んでいく様子を表現したアルバムだということが解ります。

まぁ、この曲はアルバムの最後から2番目なんですけど、水の旅はここでひとまず終わりということで。

あるいは、人間が小さな船でゆらゆら海に揺られてて、おだやかな波に任せて、かじを離してしばらく一休み、という気分にもさせてくれる曲です。

伴奏のピアノとオカリナのロングトーンが印象的。あー、たまには海行きたーい。


水と土への祈り (作曲:宗次郎)

アルバム「水心」最後の曲。水と土は切っても切れない関係なのかも。特にオカリナ製作している宗次郎にとっては、水と土は大事な存在なのかもしれないですね。

全体的に物悲しいメロディラインで、テンポはかなりゆっくりです。一言一言心を込めて祈っているカンジが伝わってきます。いつまでも水と土が綺麗であるように、と。

いや、オカリナが作れなくなるからじゃなくて、自然がいつまでも綺麗でいてほしいっていう祈りですよー。まぁ、自然を題材にした音楽を作る宗次郎を見れば、そんなことは言わなくても解りますね。

全体的に見ても同じで、中盤のオカリナソロも、かなり低くて太い音のロングトーンが多いです。これも祈ってることの表現なんでしょう。


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