1996年にピッコロをやっていてアンブシュアが崩れて音が全く出なくなって、奮闘虚しく挫折したのですが、当時の「なぜ音が出なくなったのか」を考えずに闇雲に息を吹き込んでいただけの私はただのアホでした。
そして2017年にまた横笛を再開したいと思ってプラ製のアイリッシュフルートを始めて、それからはよく考えながらアンブシュアを試行錯誤するようになりました。それから今に至るまでのアンブシュアの研究と練習レポート(別名:悪戦苦闘レポ)を書いていきます。悪戦苦闘とトライ・アンド・エラーの連続でしたが、なんとか現在では最低音から3オクターブ目のEかFくらいまで音を出せるようになっています。
このレポートをお読みになって、現在横笛のアンブシュアで悩んでいる・困っている人の参考に少しでもなれば嬉しいと思い、ここにアップした次第です。
ではレポート開始です。
私はちょっと事情で、上の前歯が一本もないんです。なのでどうしても上唇が引っ込んでしまい、横笛を吹く時に下向きに吹けませんでした。
それで考えたのが上野星矢さんのアンブシュアを少し真似してみようということで、上唇の力を完全に抜きまくって、上唇の内側にだけ空気を送って上唇をびろーんと膨らませて伸ばして滑り出させる方法です。上野さんのアンブシュアを見ているとそういうやり方なのかな?と勝手に推測していたので。
それで何とかアイリッシュフルートや、その後購入したモダンフルートはとりあえず2オクターブ分音が出ていました。
ここで唇の元々の造形の話になりますが、私の上唇の元々の造形や肉付きは、上唇の真ん中に出っ張りがあって、そのために息が一本線にならずに左右両方に分かれてしまって、それで音が出なかったんですよね。真ん中にアパチュアを作りたいのに出っ張りが邪魔になって作れなかったんです。
で、それを解消するためにさっきの上野星矢さんを真似たアンブシュアで無理やり上唇を滑り出させて無理やり上唇の真ん中に穴をあけて息を送る、という方法を取ってました。
もちろん時々見かける方々のように、ランパルや昔のボーマディエを真似て唇の脇から息を出す方法も試したんですが、いくら慣れだとはいっても私の場合はどうしても違和感がありまくって1オクターブ目の音さえも滅多に出ませんでした。どんなに模索を繰り返してもダメだったので、その吹き方は私には向いていないんだなと判断して、ランパルやボ−マディエの真似をするのは諦めました。
まぁ最初のアンブシュアで音自体は出ているからいいかと思って。
ところが、半年くらい経ってからまた昔のようにピッコロを始めたくなり、とりあえず最安値のアイリッシュピッコロを買ってアンブシュアの模索をしていたところ、先述のフルート用のアンブシュアでは1オクターブ目はなんとか出せても2オクターブ目が全然出なかったんです。いくら試行錯誤を繰り返してもダメでした。
なぜダメなのかを考えたのですが、フルートと違ってピッコロは息を真下に吹かなければならないために、先述のフルート用のアンブシュアでは、私の場合は真下には吹けないからだと気付きました。
さぁ困ったどうしよう、これではピッコロ吹けないじゃん、となって、フルートよりもピッコロを始めてからのアンブシュアの悪戦苦闘のほうが尋常じゃなかったです。ネットで検索しまくりながら同時に知恵を絞りまくって解決するまでには結果的に4年半もかかってしまいました。
ではピッコロのアンブシュアでどういう悪戦苦闘をしてきたのか、順番に具体的に挙げて行くと・・・
2オクターブ目を出すために、唇を強めに閉じていたこともありましたが、これがクセになってしまうと、上唇の出っ張りによるアパチュアの詰まりが生じて、吹き込んでから音が出るまでにタイムラグ(ひどい時には約0.5秒も)が出てしまい、音自体は出せてもこんなに致命的なタイムラグがあるんじゃこの方法は演奏には使えないと思ってヤメました。
そこで思い付いたのが、入れ歯です。上の前歯が無い部分に入れ歯を付けることによって僅かに出っ歯気味にして上唇を出して、それで自然に息を下向きに吹けるようになるんじゃないか、という発案でした。
ただ、最初に作った入れ歯は確かに出っ歯気味にはなりましたが、その分口が開きすぎてしまって燃費が最悪でした。
ので、この方法はヤメました。
次に考えたのが、入れ歯を入れた状態での、いわゆる粘膜吹きです。上唇の内側の粘膜を息圧で風船のようにプク〜っと膨らませることによって音を出す、あの吹き方です。
粘膜吹きは個人的に「風船吹き」と呼んでいますが、この風船吹きをやると音は出てもやはり息漏れがひどく、息を大量に消費してしまい燃費が極めて悪くなるだけでなく、そのまま無理に続けていると肺を傷めてしまうことに気付き、それで風船吹きもヤメました。
さて困った。どうすれば正常に2オクターブ目が出るようになるのか、いろいろ考えてもあらゆる面から試行錯誤しても、異常に息を消費してしまったりタイムラグがひどくなってしまう吹き方は治らず、途方に暮れて月日が経つばかりでした。
スペアとして作っておいた入れ歯があったのですが、これが殆ど出っ歯状態にはならない形で、歯科技工士さんに希望を充分に伝えていなかった私のミスで、2つ目の入れ歯は眠らせていました。
そんなある日、YouTubeでふと見つけた動画で、ある人がファイフを吹いている動画のアンブシュアが強く印象に残り、よく見てみるとその人も上唇の中央に出っ張りがあるにも関わらず、その人はその出っ張りの部分を前歯に押し当てて息圧をかけることによって出っ張りを裏返して、結果、唇のど真ん中から息を出していたのです。
出っ張りが裏返っている証拠に、その人の上唇の外側の粘膜にはしっかり横ジワができていました。本当に見とれるくらい綺麗で見事なアンブシュア・テクニックでした。
これには本当に目からウロコで、早速その人のアンブシュアの研究・分析を始めて、どこの筋肉をどう使えばああいう状態を作れるのかを研究しまくって、それを自分でもコピーできるように模索を繰り返しました。
結果、二度目に作った入れ歯のほうがこのアンブシュア作りには最適ということがわかり、私も首尾よく出っ張り裏返しができるようになって、ようやくアパチュア詰まりによるタイムラグもなく燃費もまぁまぁ良好になって今に至ります。
というわけで私のように上唇の真ん中に出っ張りがある場合、その出っ張りを前歯に押し当てながら息圧で裏返して、その結果上唇の外側の粘膜に横ジワができれば、首尾よく出っ張り逃がしができている良い目安になることが、YouTubeのその人のおかげでわかるようになりました。もう感謝しかありません。感謝の気持ちを込めて「横ジワさん」と呼んでもいいですか?
振り返ってみれば、私にとっては、二度目に作った入れ歯は期待外れで役に立たないと思っていたのが、実はその全く逆だったわけですね。
アンブシュアにはこれといった正解が無いらしく、1000人居れば1000通りのアンブシュアがある、と言われているようです。それほどまでにアンブシュアというのは個人差があって当たり前らしいです。結果的に良い音出しができていればアンブシュアなんてどんなものでもOKらしいですね。
(2023/11/25土曜日。後日談)
その後更に研究と模索を繰り返して、今では入れ歯無しで2オクターブ目のハイエンドまで出せるようになりました。冒頭に書いた「上野星矢さん吹き」をピッコロでも実現できたんです!! 吹き始めのタイムラグも殆どなく、燃費もかなり良くなって、2018年の入れ歯を使っていなかった当時のアンブシュアに戻ったかんじです。
諦めないで研究と模索を続けることってほんとに大事だなぁと思いました。
完全に独学なので直接教わったわけではありませんが、上野星矢さん、本当にありがとうございます!! どれほど感謝してもしきれません。
そんなこんなで現在は、入れ歯を付けた状態での先述の横ジワさんのアンブシュアと、入れ歯を付けない状態での上野星矢さんアンブシュアの両方を、その時のコンディションや条件などに応じて使い分けています。
私なりの、横笛のアンブシュアのノウハウ
あくまでも私なりの吹き方に過ぎませんが、どなたかの参考になればと思ったので書いておきます。
音楽界隈では、なぜかアンブシュアのタネ明かしを嫌がる人がいらっしゃるようですが、私はどんどんタネ明かしをしたいと思っています。それによって少しでも多くの人がアンブシュアの苦労から救われたら嬉しいので。
以下、私なりの、横笛のアンブシュアのノウハウです。
・まず口を半開きにします。2ミリくらい開けるかんじで。
・上唇は本当に完全にビロンビロンに脱力します。
・そして息を吹き、上唇の内側のみに息を当てて、上唇の内側の粘膜全体をプクーッと膨らませます。上唇の内側の粘膜は結果的に前に出て尖る形になります。
・すると、上唇の粘膜が膨らんだ分、半開きだった口の2ミリ前後の穴が塞がって、人によって違いはあるものの唇の何処かにアパチュアが出来て、更に息のビームの向きが下のほうに行ってくれやすいです。
・低い音ほどアゴを開き、高い音になるにつれてアゴをだんだん閉めていくと、ローエンドからハイエンドまで出しやすいように思います。
上唇の内側の粘膜を下向きに伸ばし被せする感じです。
結果的に、アゴは無意識にちょっとだけ引くかんじになります。
お分かりでしょうか・・・? うまく伝わっているか自信がないですが・・・
この吹き方のコツは「半開きにして、上唇を完全に脱力して、息圧だけで上唇の内側の粘膜を膨らませること」です。上唇に僅かでも力が入っていると、どうしても息漏れして燃費が悪くなるだけでなく、音自体が出ないこともあるので、上唇は完全脱力を心がけています。
あと、上唇だけでなく下唇も完全脱力しないと、下唇に僅かでも力が入っていると、その分下唇が突っ張って前に出てしまうために、上記の「上唇の内側の粘膜を下向きに伸ばし被せ」が出来にくくなってしまって、やはり音が出にくくなったり音が全く出なくなったりしてしまいます。これも充分に気を付けています。
(2024/10/05土曜日に追記)
今まで私は、「下唇なんて関係ないよ。上唇のほうがずっと大事だよ」と思ってきたんですが、ツイッターの検索でフォロワー外のある方のツイートで
「笛を押さえ付けずに、下唇を完全脱力すると上唇が完全にフリーになって、アンブシュアが安定しやすい」
と書かれていて、ホントかなぁ・・・と半信半疑で模索を始めてみたら、
「・・・!! ホントだ!! 今私が取り入れている「上野星矢さん吹き」にとっては下唇完全脱力はこんなにも効果があるんだ。これは初耳で全くの盲点だった!!」
と気付いたんです。
その時点でもう今日は2時間経っちゃって疲れたので帰宅しましたけど、これは良い!! 今後どんどん下唇完全脱力を取り入れていこう、と思いました。
大ヒントをくださったツイート主さん、ありがとうございます!! 大感謝です!!
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2024/10/17追記。
以下のこともアンブシュアのミスの記録ですが・・・
先日まで私は、横笛のエア練習・音出し問わず、吹いていると、体内全体が息苦しくなることが非常に多かったんです。
なぜ息苦しくなるのだろう?と思ったのですが、原因がわからないまま月日が経って行ってしまいました。
そしてある日、ふとひらめいたんです。
「アパチュアが詰まっている故に、逃げ場を失った強い息圧が体内に戻って、内臓を圧迫するから息苦しくなるのではないか?」
と。
つまり私の不手際で、口の半開きがしっかりできていないからアパチュアが詰まっていて、そのサインが体内全体の息苦しさだった、と気付いて、以後はよく意識して口を半開きにしてから吹き始めるようにしたら、息苦しくなることが無くなりました。
いや〜、
「めあ! アパチュアが詰まってるから、それじゃいい音は出ないし体にも悪いよ!」
という、体からのありがたいサインでした。感謝すると同時に気を付けなきゃ。
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以上のノウハウは、どれも強い自戒を込めて書いています。
個人的には、「半開きは全てを解消してくれる。それに気付くのに何年もかかったけど、気付いて本当によかった」と思っているところです。
このレポートを読んで、現在アンブシュアで悩んでいる人の助けに少しでもなれば幸いです。