◇アルバムの感想 風人◇


凪 (作曲:宗次郎)

一切風が吹いていない、凪の状態。山ではこんなことは滅多にないので、偶然凪になった時には嬉しいです。貴重な一瞬ですから。

まるで、時間が止まってしまったかのように動かない風景。たまらない一瞬です。

曲は、最後までオカリナのソロのみです。いかにも凪をイメージしたかのようなぴったりの曲で、宗次郎本人もかなり気に入ってるとか。

テンポはスロー気味で、やや低めの音域を使って、静まった凪の雰囲気を出してます。


風の神 (作曲:宗次郎)

神にかっこいいもなにも無いんでしょうけど、かっこいい曲だと思います。オカリナのメロディの荘厳さ、ベースラインの存在感、アコースティック・ギターの融合感、ビオラなどの美しさ。

どれを取ってもかっこいい曲としか思えないです。ほんとはもっと厳粛なイメージなんでしょうけど。

風はその場を一瞬で通りすぎていき、同じ風には二度と会えない。それだけ風には無数の種類があって、風の神はそれらを統括している存在とでもいいましょうか。

無数に存在する風の世界は、宇宙といってもいいかもしれない。はてさて、それを幾つ体験できるでしょうか?


風に揺れる木々たちと (作曲:宗次郎)

シャッフルが楽しい曲です。これをバックにダンスしても楽しいかも。森の中で、風に揺れる木々たちと一緒にダンスしてるイメージが浮かびます。

シンセサイザーのイントロや間奏も綺麗で、オカリナの弾むメロディにうまく乗っかってます。

終盤で初めて出てくるメロディは、これで終わりかと思いきや、4thの音でフェイドアウト。

ダンスはいつまでも続くという印象です。


風が谷間を降りて来る (作曲:宗次郎)

山の谷間を風が降りてきて、吹きぬけていく。その速さはゆっくりだけど、確実に上の世界の風が降りてくる。山の谷間に居る人間はそれを感じることができる。

実際、曲のテンポはややスローで、風が少しずつ降りてくる様子を、要所要所にうまく半音を入れて表わしてます。この表現力もすごい。

イントロとエンディングは、静かなピアノの音で囲まれてます。この静かなピアノが周りの山を表現してて、オカリナが谷間の風を表現してるんじゃないかな、と。

作曲もアレンジも抜群な曲です。あまりに綺麗すぎて溜め息も出ません。


林をくぐりぬけて (作曲:宗次郎)

昼でも薄暗くて、何か出てきそうな林を進む。この林をくぐり抜ければ辿り着ける場所がある。もうすぐだ、足場は悪いけど気を付けながらどんどん進もう。そんなかんじでしょうか。

間奏のアコーディオンは、エンディングでオカリナとユニゾンもしてて、これがまた見事にハマってます。

林を通ってきた今までの道なき道を語ってる印象です。林の先には一体何があるんでしょうか? 美しい泉とかならいいけど、ただの町だったらガッカリだなぁ。


流れる雲に (作曲:宗次郎)

風が雲を流していく、次から次へと流していって景色を変えていく。ごく自然なことなんだけど、それが美しい。あれれ? ついさっきまであった雲はどこへ? と、よくあることで。

雲だけじゃなくて、風で雲が流れていくっていうのがミソですね。風と雲はお友達。

雲を題材にした曲としては珍しくミドルテンポなんですよね。理由を考えてみたら、風が雲の形を次々に変えていくから景色もめまぐるしく変わる、それを表現したのかもしれないな、と。

イントロは同じフレーズが8回続き、そのあと2分音符が入って主旋律へ。宗次郎の曲ではちょっと意表を突いたイントロだと思います。他の音楽ではよくある手法なんですけど。


朝 (作曲:宗次郎)

朝焼けの中から太陽がだんだんと昇ってくるイメージでしょうね。メロディやアレンジも爽やかな印象です。

シンセサイザーとエレクトリック・ギターが入ってるんですけど、これが朝焼けのイメージを出してると思います。

意外と、宗次郎の曲のバックには電子楽器が似合ったりするんですよ。アレンジがうまいから、というのもあるんでしょうけど。


風人 (作曲:宗次郎)

風の人、とでもいうのか解らないですけど、風人と書いて「ふうと」と読むそうです。イントロのピアノは静かなものですが、中盤ではストリングスを多用して盛り上げています。リズムも4/4と3/4が交互に出てきて面白いです。

オカリナの主旋律はフレーズの切れ目を入れる場所が特徴的で、風の人の人格を表わしてる、なんてのは考えすぎかな?

ところで、風の人ってどんな人かしら? 姿を現さないで風だけを送り続ける、風の妖精とでも言うべきかな?

どんな姿なのか見てみたい。見てどうなるもんでもないけど。


光に向かって (作曲:宗次郎)

一生懸命走っている印象。全体的にお祭りのようなリズムとテンポ。オカリナの踊っているようなスタッカートも象徴的。

上の絵は、ある村の道路沿いの壁に描かれたポップアー トです。この曲のイメージにぴったりだったので撮ってきま した。

走ってるうちに光が見えた。あれが我々の目指す光だ。もっと騒げ、もっと大声をあげろ、もっと盛り上げろ、もっと 速く走れ、という言葉が聞こえてくるようです。さてさて、 この人達はどこに行くんでしょうか?


いにしへの風 (作曲:宗次郎)

風はいつも変わるものだけど、この場所にはずっと昔から同じ風が吹いている。この風は無くならないでほしい。これからも何百年も何千年も同じ風が吹いていてほしい。全体的に、そういう願いが感じ取られました。かなり厳かな気持ちで聴きたいです。

間奏に入ってる二胡のフレーズと音色が、すごくいいです。歴史を感じさせてくれる音とでもいうか、二胡のあの独特な音色がたまりませーん。

私は弦楽器では二胡の音が大好きです。この曲にとっても似合ってると思います。


Home